■ トリカブト
楽しい時間はあっという間だ。
次会う時は新学期、そう約束して私はセドリックと別れた。
研究室に戻ると、スネイプ教授が相変わらず仏頂面で鍋をかき混ぜている。
この臭い、嗅いだことがある。
最初にスネイプ教授が作っていたものだ。
『またこの薬ですか?』
ただ今帰りました、と呟きながら鍋をのぞき込む。
苦い香りが鼻を通る。
「左様、これはトリカブト薬だ」
『トリカブトというと、ウルフスベーンとモンクスフード、アコナイトですね』
あれだけ詰め込まれればおぼえるというものだ。
スネイプ教授は満足そうに頷く。
「トリカブト薬は調合が困難だ。おいそれとできるものではない」
スネイプ教授はできるんですね、というと少し機嫌がよくなったように見える。
『どのような効果があるんですか』
「脱狼薬と言えばわかるかね」
教科書で読んだ覚えがある。
『狼男の満月時の変身による自我の喪失を抑える薬……ですか』
教授は頷く。
これくらいで褒めてくれないのが教授だ。
『狼男なんて本当にいるんですね』
何気なく呟くとスネイプ教授は鼻を鳴らした。
「すぐに分かる」
どういうことだろうと思うが、スネイプ教授はそれ以上口を開かない。
私はいつもの机につき、教科書を開いて勉強を始めることにした。
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