■ ボーイミーツガール

手紙を送って二日後、私とセドリックはフローリッシュアンドブロッツ書店で待ち合わせをすることになった。

私は魔法生物の本を買いたかったのでありがたい。

早く来すぎてしまっただろうか。

一通り本を見繕うと、購入する。

1ガリオンと12シックルを支払い読みながら待っていると、Tシャツをきた青年が近寄ってくる。

ぱっと顔を上げるとセドリックだった。

『あ、こんにちはセドリック!』

「やあ、ユウリ!待たせてしまったみたいだね、さあ行こうか」

セドリックはごく自然に私の手を握ってくる。

私は本をバッグにしまい込みながら、その手を握り返した。


「そうなんだ、君も魔法生物に興味があるんだね」

『うん、不思議な体質で生き物から好かれるから、私も興味もっちゃって』

アイスクリームパーラーにつくと、セドリックはすぐに人気のフレーバーを頼む。

その手馴れた頼み方を見て私は疑問を持った。

『もしかして何度も来てる?』

「小さい時から父親に連れられてね、ここのサンデーが本当に美味しいんだ」

店主は笑って用意してくれる。

「ディゴリーさんは本当によく来てくれていたよ。セドリックもこんなに大きくなって、いつの間にか可愛いガールフレンドまで連れてきてね」

ガールフレンド、私のことだろうか。

「ええ、可愛いガールフレンドでしょう?」

『なっ』

セドリックの言葉に赤面する。

『ガールフレンドじゃありません!!ただの友達です!!』

必死に弁解する。

2人も冗談だと分かっていたようで、必死なのは自分だけだとわかった時、かなり恥ずかしくなった。

サンデーを受け取り、店の中のテラスで話しながらそれを食べる。

味は最高に美味しかった。

甘すぎない生クリームに、ちょっと酸っぱいベリーソースのかかった仄かな甘みのバニラアイス。

そんな私を見てセドリックはまた笑った。

「君の幸せそうな顔を見るとこっちも嬉しくなるよ」

なんという口説き文句。

私は赤くなった顔を隠すように急いでサンデーを食べる。

『と、ところでセドリックの寮はどこなの?』

急いで話題をそらした。

セドリックは困ったように笑う。

「僕はハッフルパフさ。分かるかな?」

『黄色のとこだよね』

ホグワーツの歴史という本に書いてあった気がする。

ヘルガ・ハッフルパフの創設した寮だったと思う。

それを言うと満足そうに頷かれた。

「ハッフルパフは落ちこぼれが多いと言われるけど、僕はそうは思わない。心が優しく誠実な人が多い寮が、落ちこぼれなわけないだろう」

セドリックの言葉に私も頷いた。

『私、スリザリンは嫌いだな。できればハッフルパフかグリフィンドールがいい』

セドリックは嬉しそうにアイスを口に運ぶ。

「そう言ってくれて嬉しいよ。ところで気になってたんだけど、君は今どこに住んでるの?」

『えーっと、日本からの編入ってことでホグワーツにいるんだ。物置小屋にベッドを入れて、昼間は勉強してるんだよ』

誰に、というのは内緒だ。

聞かれていないし。

「昼間から勉強!?ならば今日僕と過ごさなければ勉強してたってことかい?」

私は苦笑する。

『だからセドリックからの手紙を毎日楽しみにしてるんだ。毎日ありがとう』

そう言って笑うと、セドリックは少し顔を赤くする。

「いや、僕も嬉しかったよ」

そしてもごもごと口を動かす。

「これからも、手紙を出してもいいかな」

私は驚いたが、すぐに笑みを見せる。

『もちろん大歓迎!できれば新学期が始まっても文通してほしいな』

だって、あなたがこっちにして初めての友達なんだもん。

そう心の中で付け加える。

「こっちの台詞だよ!いいのかい?」

私は返事の代わりに笑顔を見せた。



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