■ 疑い晴れる

すぐに校長室に連れていかれる。

ちなみにここまでずっと無言。

手を引かれてここまでやってきたが、教授の顔を見ることは無い。

ふくろう小屋の近くを通ると、ゴロスケの声が聞こえたが、そんなことを言う余裕も無い。

『……』

なんだか泣きそうだ。

何かやってしまっただろうか。

低い声でレモンキャンデーと呟き、中へ入り込んでいくスネイプ教授。

私もそれについて行く。

中にはダンブルドア校長がいた。

入るとすぐにスネイプ教授が話し始める。

「こやつはどこから来たと仰せでしたか」

「この部屋にいつの間にいたのじゃよ」

まわりの肖像画もうんうんと頷く。

私は黙り込んだ。

いつ矛先がこちらに来るか。

「こやつは、蛇語が話せる」

ダンブルドアは表情を変えることは無いが、少し眉を動かした。

「ほう」

『え、あの、私』

ぎろりとスネイプ教授の目が私を睨む。

口を出すなということなのだろう。

私は口を閉じた。

「どのような経緯で?」

ダンブルドア校長は私の肩をぽんと叩き、椅子へと促す。

私はフォークスの近くの椅子に座った。

フォークスはぱちりと目を開けると、嬉しそうに鳴いた。

「イーロップでふくろうを買う際、あまりにもふくろうに懐かれていて不思議に思い、となりの魔法生物ペットショップにも連れていったのです」

「なるほど、そこで蛇と話したと」

フォークスを撫でながら出されたチョコレートココアを飲む。

暖かく美味しい。

『大した話じゃなかったんだけどなぁ』

何気なく呟くと、ダンブルドア校長はこちらを見る。

「何を話したのかの?」

『えっと、水槽が狭いから出して欲しいって』

ダンブルドア校長は笑う。

「セブルスが考えているほどにこの子は闇の魔術には関係しておらんと思うがの」

「しかし、蛇語が先天的に話せるのは極めて稀です」

スネイプ教授はこちらを睨む。

さっきまであんなに優しかったのに、なんでだろう。

「こう考えてはどうじゃ。蛇語だけではなく、他の生物の言葉も理解できる」

「なるほど」

ダンブルドア校長はこちらに近寄ると、笑って話し出した。

「“今話してる言葉が理解できるかの?”」

『“できます。というか、どこが変化しているのかよく分からないんですけど”』

スネイプ教授は目を見開く。

ダンブルドア校長は嬉しそうに立ち上がった。

「どうじゃセブルス。マーミッシュ(水中人語)も理解でき話せるならば、なにも不思議なことはなかろう」

「…左様ですな」

スネイプ教授の目が少し優しくなったような気がする。

よかった、どうやら疑いは晴れたようだ。

フォークスはクルルと鳴き、こちらをつぶらな瞳で見つめる。

『ちょっと寂しいと思っちゃったよ』

フォークスが慰めてくれていると思った。

どうやらこの世界の生き物の言葉が分かるようになったみたいだ。

フォークスの言葉は聞こえないが、なんとなく思っていることは分かる。

『フォークスが話し相手になってくれるなら、寂しくないよ』

フォークスのふさふさの羽を梳く。

「フォークスの気持ちも分かるのかの」

『なんとなくですよ、はっきりとは分からないです』

ダンブルドア校長が近くにいたので、立ち上がって身なりを整える。

『あの、私をここに置いてくださってるのは本当にありがたいと思っています。けれど、本当にいいのですか?』

「なにがじゃ?」

『迷惑をかけてないかなって、スネイプ教授もそうだし、校長にも』

スネイプ教授はダンブルドア校長に目線を向けられ、少し嫌そうな顔をする。

「別に、迷惑ではない」

スネイプ教授の小さな声。
しかし私にははっきりと聞き取れた。

『ほんとですか?教授』

「……ああ」

私は嬉しくなって教授に飛びつく。

「やめんか!」

怒られるが、それでも嬉しかった。

やっぱりスネイプ教授は私の保護者だ。



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