■ みんな、再会しよう

次の日、私達は馬を走らせる。

「昨晩はお主が鹿を狩ってくれたが、今日はどうしようか」

『そうだね、また私が狩ってもいいけど』

「頼ってばかりもいられまい」

ギーヴは皮肉をこめて言い放った。

私は苦笑する。

「待て、あそこに野生馬がいる」

ギーヴは歩みを止める。

後ろのアルスラーンとエラムも止まった。

『あれは野生じゃないね』

馬から降りると、私は目を凝らした。

ギーヴは頷く。

「側対歩で走る馬などいないからな」

「そうですね、あれはよほど訓練された馬に見える」

エラムは私の隣で呟いた。

『あれを捕まえるんだよね』

ギーヴの意気揚々とした表情に、私はため息をついた。

投げ縄を簡単に拵え、ギーヴは背の高い草の中で時を待つ。

ちょうど良い位置に来た時、ギーヴは投げ縄を投げた。

その縄は馬の首にかかるが、すぐに何者かがその縄を切る。

遠くから見ていた私とアルスラーンとエラムは目を見開いた。

『あれは!』

「ダリューン!」

二人もそのことに気づいたようで剣を交える寸前で止まった。

私達はその近くによる。

「お主ら、無事であったか!」

近くの草むらに隠れていたもう一つの影。

ファランギースだ。

元々いた七人のうち、六人がこうして揃ったのだ。

アルスラーンは残りの一人の心配をする。

軍師ナルサスだ。

話し合いの結果、エラムとダリューンがナルサスを探し、残りはそのままペシャワールを目指すこととなった。

アルスラーンは不服そうだが仕方ない。

この中で一番武力的に弱いのはアルスラーンであることは本人も分かっている。


次の日の朝方。

ダリューンとナルサス、そしてエラムと少女が合流してきたのだ。

これで八人に増えたことになる。

『ナルサス、無事で良かったね』

私は後ろの少女が、睨むのを気にしながら話した。

いや、そんなに睨まないで欲しいな。

「あんた、ナルサスのなんなのさ」

え、と私とナルサスが固まる。

『ナルサス、この可愛い子は君の彼女?』

「勘違いするな!アルフリードが勝手に言っておるのだ!!情婦、妻などと勝手にも程がある!」

逆上するナルサス。

珍しいものだ。

『よろしくねアルフリード。私はアスラ、ナルサスとはただの仲間だから安心してよね』

そう言って握手を求めろうとするが、アルフリードは無視する。

軽くショックを受けながらも、私はナルサスを小声で呼んだ。

ナルサスはそれに応じてこちらに寄ってくる。

『私はそろそろ向こうの世界に戻るかもしれないからさ、ペシャワールについたらそっと消えるつもりだよ』

え!?と声を上げるナルサス。

根拠となる出来事を言うと、ナルサスは納得したようだ。

悲しそうにこちらを見てくる。

「残念だ、もっと話したいことがあったというのに」

その顔を見て私は軽く笑った。

『シャプールとイスファーンにも会えた。私はアルスラーンの即位を見たかったんだけどね』

残念そうにいうと、ナルサスは頷いた。

「ああ、見て欲しかった。心からそう思うよ」

私はぽんとナルサスの肩に手を乗せると、何も言わずにナルサスの前から去った。

ダリューンとファランギースにも言わなければならないのだ。

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