■ そうだよ、仲間さ

私は一つの宝石を取り上げた。

『ギーヴがこれを捨てるなんてね』

「同じくそう思うよ」

ギーヴはため息をつく。

「ギーヴの機転にはいつも助けられるな、礼を言う」

「どういたしまして」

アルスラーンの言葉にぶっきらぼうな返答をするギーヴ。

かなりの損失だろう。

さきほどの落馬のダメージにより肩を貸されているエラムはすぐにアルスラーンから離れる。

「私は大丈夫ですから」

それを悲しそうに見つめるアルスラーン。

「エラムは私が嫌いか?」

驚くエラム。

「私はお前と友達になりたい」

アルスラーンのその言葉にギーヴは私の横に立ち、目を見開いている。

私は笑った。

「もし嫌いでないなら友達になってくれないか」

エラムは打ち付けた腕を握りしめながら話し始めた。

「私は解放奴隷の子です。友達だなどと、殿下と私では身分が違いすぎます」

アルスラーンは慌てた。

「身分などと言っていたら私は誰ひとり友達ができなくなる!」

エラムはなおも跪き、続けた。

「いずれにしても、助けてくださって殿下にはお礼のしようもございません。ご恩は必ずお返しします」

アルスラーンは困ったように笑った。

「気にするな、私も助けてもらった」

ギーヴは私に小声で話しかける。

「あの王子、やはり不思議と思わんか」

『そんな王子がいてもいいと思うけどね』

私の笑顔にギーヴは何も言えなくなったようだった。

エラムはルシタニア兵の死体から矢を補充する。

ギーヴも剣を取り替える。

ふとアルスラーンの剣を見て、ギーヴは持っていた剣を渡した。

アルスラーンは断ろうとするが、ギーヴは諭す。

「そんな剣では友のひとりも守れませんぞ」

アルスラーンは軽くエラムを見ると頷きギーヴの剣を受け取った。

私は矢を補充するエラムに近寄る。

『まだ痛むかな?』

「少しだから大丈夫だ。心配はいらない」

私はフェニクスを発動させた。

光り輝く鳥はエラムの腕に近寄り、不思議な光を放つ。

エラムの表情が変わった。

フェニクスが消えると、エラムはこちらを見る。

「痛く、ない」

『だよね?私にも少しは頼ってよね』

そう言って笑うとエラムは恥ずかしそうに目をそらす。

「お主も私が解放奴隷の子だと聞いただろう。王族の近衛であった者が私に馴れ馴れしく話しかけても良いのか」

私は近寄ってきたギーヴとアルスラーンに気づく。

しかし続けた。

『実はね、私も奴隷だったんだよね』

エラムは驚愕する。

ギーヴもえっと声を出す。

「何故、そんなに明るく堂々と振る舞えるんだ」

『それは紅炎のおかけだけどね』

深く話すことはやめた。

『だからといって君の態度が変わらないならそれまでだけどね』

そう言って笑うと、エラムも少し笑った。

「そうだな、奴隷ということは関係ないのだな」

『そうだよ!今は仲間だもんね』

そう言ってアルスラーンを見ると力強く頷かれた。


私は近くにいた持ち主のいない馬に乗り、私たちは旅を続けた。

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