■ やっぱ、弓はダメ

私は先ほどのカシャーン城で貰っていた弓矢を番える。

『練習しとかないとね、遠距離攻撃』

いいところに牝鹿を見つけ、弓を引き絞る。

エラムやギーヴの見様見真似だ。

ぴゅんと飛ぶ矢。

しかし、矢は届かずにすぐそこの地面へ落ちた。

『えへ』

恥ずかしくて、自分で笑ってみる。

鹿は逃げてしまった。

『私には近距離が向いてるってことかな』

自嘲気味に笑いながらその鹿を追った。


牝鹿の匂いを追うと、そこには矢の突き刺さった牝鹿の死骸があった。

『え!?』

ぱっと身を隠す。

誰かがいる。

首元にささっているところを見ると、かなりの手練だ。

私はすぐに木に飛び上がった。

そして葉の影に身を隠す。

コナラの木の匂いでこれならば猟犬にも見つからないだろう。


しばらくすると長髪を一括りにした男が歩いてくる。

そばには犬もいる。

マントを見る限りルシタニア兵ではない。

私は安堵した。

武装した地元民だろう。

その男が鹿を括り肩に担いで去っていったのを見て、私は下に降りた。

『鹿、手に入れられなかったな』

帰り道で二羽のウサギを捕らえた私は少し落ち込みながらも、皆の元に戻った。

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