■ 詐欺師、心配したよ

ファランギースの元にたどり着くと、あらかたの計画を伝える。

『ナルサスは今夜のうちにここを立つつもりだ』

ファランギースは肯定するように頷く。

「そうであろうな。睡眠薬など信用出来ぬゆえ」

ファランギースは水盆に瓶から水を注ぐ。

ファランギースは女神官だ。
なにか儀式のようなことをするのだろうか。

私は寝台に乗った。

『出立の準備は出来ているよね』

「無論じゃ。元々荷物もそう多くはないのでな」

私の腰に帯びた剣が淡い光を放ち始めた。

ファランギースが見つめる盆から幽かな音が聞こえる。

『ファランギース、なにをやってるのかな』

「精霊(ジン)の声を聞いておるのじゃ。少し騒がしいのでな」

私はふーんと相槌をうつと、剣を見つめる。

『私の眷属器も反応してる。やっぱりファランギースのいう精霊ってこっちのジンと関係あるのかな』

「詳しくはわからぬが、こちらでいう神器に似ておる」

『そっか、やっぱり似てるのかな』

私は剣をしまう。

ファランギースはなにかに気づいたようでさっと窓を開ける。

そこにいたのは。

『なにをやってるのかな』
「なにをやっておるのじゃ」

二人の声が重なる。

格好つけたギーヴがこちらにキラキラとした笑みを向けていた。

ファランギースは足を、私は剣の柄をギーヴに向けて窓から落とそうとする。

『ごめん眷属器が勝手に』
「精霊が窓から足を出せと囁いておる」

「待て待て待て待て二人共!」

ファランギースはようやく足をどける。
私も剣をしまった。

「軍師殿からの伝言だ」

私ははっと窓の下を見る。

『あのことだね』

「わかりやすいねぇ、ホディール殿」

窓の下には多くのホディールの兵達。

もっと忍ばせても良かったのではないかと思うほどにばればれだ。

『これじゃ迎え撃てと言ってるようなものだよね』

「そうじゃの」

ふと気配を感じ上を見ると窓の上からエラムがすっと降りてくるのが見える。

私はギーヴとファランギースに言うと、エラムを部屋に迎え入れた。

『エラム、どこにいってたのかな』

「ナルサス様に言われて、兵舎の弓の弦を全て切ってまいりました」

ギーヴは大笑いする。

「さすがは軍師殿!ぬかりがないな」

『見つかるかと思ってヒヤヒヤしたよ』

私の言葉にエラムは苦笑した。

「アスラ、俺のことは心配してくれぬのか」

『ああ、ギーヴ。君ももちろん心配したからね』

付け足しのようにいうとファランギースは少し笑う。


そろそろ出立だ。

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