■ 煌めくは、銀の仮面

暗い地下室。

手の標本や様々な薬品が棚に並ぶその部屋に入るひとりの男がいた。

その男は漆黒の高級なマントを着て、顔には異様な輝きを放つ銀の仮面をつけていた。

その男が向いている部屋の奥には同じような仮面を被った黒づくめの男。

「わざわざ俺を呼び出した用件について話したらどうだ」

銀仮面の男はその仮面に不釣り合いなほどの美声であった。

十人のうち十人がその男の仮面の下が美丈夫だと思うだろう。

その男の声はそれほどの響きであった。

黒づくめの男は銀仮面の男を見て言った。

「カーラーンが死んだ」

その言葉に銀仮面の男は幾分かの衝撃を受けたようであった。

「あやつは俺によく尽くしてくれた。彼の遺族は俺が責任をもってとりたててやろう」

銀仮面の男の声には少し悲しみが混じっているように感じられた。

銀仮面の男は部屋の中を照らす松明から少し距離を置くようにして尋ねた。

「死因は」

「アンドラゴラスの小せがれの一党にやられた」

銀仮面の男の表情が明らかに歪んだ。

それを強めるかのように黒づくめの男は続けた。

「お主に敵対する者が近くに来ておるようだぞ」

「アンドラゴラスの小せがれか?」

銀仮面の男の質問に相手は頭を振った。

「違うが、それに近しい者のようだ」

誰だ?という問いにも男は頭を振った。

「そこまではわからぬ。言うたであろう?体力を消耗したと」

銀仮面の男は近くにあるテーブルに金貨の入った袋を無造作に置いた。

「誰であろうと排除するのみよ。これはいつもの礼だ」

踵を返す銀仮面の男。
それをとめる黒づくめの男。

その仮面の下は見えないものの、明らかに笑っていた。

「敵対する者の中に面白い者がいたという」

銀仮面の男は再び黒づくめの男を見た。

「面白い、とは」

「異世界から来た、魔法を使う女だ」

銀仮面の男の顔は変わることがない。

「その者の容姿は」

「偵察に行ったものの話によると、柘榴のような赤き瞳と髪をしているという」

銀仮面の男ははっとしたようだった。

その頭の中には一人の人物が浮かんでいた。

「先日水路で出会った謎の人物。髪は被り物のため見えなかったが赤き瞳であった」

黒づくめの男は嬉しそうに笑った。

「おそらくその者であろう」

銀仮面の男はふっと笑った。


面白い、その女、必ずや俺の手中に。


そして銀仮面の男はその薄暗い部屋から出ていったのだった。

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