■ ごめん、ごめんね

※R15注意
苦手な方はバックしてください



シャプールが目を覚ました。

私は握られた右手を不思議に思いながら左手でシャプールの頭を撫でてあげた。

『随分と遅いおはようだね、シャプール。心配したんだよ』

「こちらの台詞だアスラ。あのとき俺はお前が目覚めるのを待つことなくパルスに戻ってきてしまった」

頭に置いていた手を頬に持っていく。

『良かったね、頬の骨も治ってるみたいだよ』

シャプールは握った右手をそのままに、頬にある左手も握ってきた。

『シャプール、どうしたの』

「アスラ、もう俺は子供じゃない」

シャプールはゆっくりと身体を起こした。

治ってはいるが、受けた疲労は蓄積されているはずだ。

シャプールを寝かせようと身体をシャプールの方に寄せた時だった。

ふわりと身体が浮く。

そして私はシャプールの腕の中にいた。

なんでこうなったんだろうということを疑問に思いながら、私はただじっとしていた。

「アスラ、俺はお前のことが好きだ」

シャプールは腕にさらに力を込めた。

ちょっと、待って、よく分からない。

『私もシャプールのこと、好きだよ?』

戸惑うように答える。

当たり前だ、シャプールは弟のようなもの。

家族なら抱きしめ合うのは普通、だよね?

シャプールにとっては普通に違いない。

しかしシャプールは悲しそうに眉を寄せた。

「やはり伝わらんか」

そう言ってシャプールはさらに強く私を抱きしめた。

少し痛い。

「俺はお前を失いたくない。勝手かもしれないが、お前をあちらに帰したくないのだ」

あちらとは煌帝国のことだとすぐに分かった。

シャプールはあまりに悲しくて、私にべたべたしたいのかなー。

なんて楽観的なことを考えながら、私はシャプールの胸を押した。

『シャプール、私は煌帝国に帰るからね。でもそれまでは私に甘えていいんだからさ』


シャプールの顔が近くにある。

あの時とは違う大人びた顔つき。

不覚にも、どきっとしてしまう。


そのシャプールの顔が私にさらに近づいていたと気づいたのは、私の唇に何かが触れた後だった。

酸素を取り込むための口が塞がれる。

別に今までキスをされたことがない訳では無い。

しかしこれは明らかに私が味わったことのないものだった。

『んんっ……!!』

くぐもった声が寝台に響き渡る。

何度も何度も方向を変え、シャプールは私の口の中を犯してくる。


『……んっ』

何分がたっただろうか、私の頭がぼーっとしてきたのがわかる。

最初は抵抗していたが、途中から脱力してしまった。

魔力が不足していて、力が入らないということも一因だろう。

シャプールは肩で息をする私の口からようやく離れた。

口の右端の唾液をぺろりと舐めとる様子があまりにも妖艶で、私はゴクリと息を呑む。

「すまない、だが……俺はお前を好きなのだ。家族としてではない、一人の女性として、愛している」

『シャプール、離してくれるかな』

私がすこし低い声で言うと、シャプールは少しびくりとして手を離した。

『シャプール、私はまだ受け入れられないんだよね。君が私より大人だってこと』

シャプールは黙っている。

私はぐいっと口を拭った。

『私の中にまだ紅炎に仕える気持ちが残っているあいだは、私は恋人を作る気はないからさ』

そして笑った。

『また会おうよ、シャプール』

そして私は治療室の窓から飛び降りた。

後ろから止める声はしなかった。

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