■ 兄弟、戦に行こう

次の日、紅炎に呼び出しをされた私は驚いた。

『シャプールを連れて戦場へ?』

嫌だ。
まだシャプールにはこちらでの戦は早い。

「しかし初陣は終えていると言っていたぞ」

私は歯を食いしばる。

「いつまで保護者面している、強くなって欲しいのだろう」

『それは……』

私は息を吐く。

「子供一人を守る力をお前は持っている」

紅炎はふっと笑う。

そうだろう?と言いたげな表情に私は何も言えなくなる。

『そうだよね、そうに決まってるよね』

私は紅炎から貰った剣を撫でる。

剣の鍔に施されている獅子が煌めいた。

アシュタロス、ヴィネアの眷属としての力を嘗めないでほしい。

「今回の将軍は紅覇だ。紅覇の指示を仰げ」

私は力強く頷くと、兄弟の待つ部屋に向かう。

「アスラ」

紅炎の呼び止めに振り向く。

紅炎は変わらぬ表情で言った。

「帰ってこい」

『分かってる』

私は紅炎以外の元で死ぬ気は無いからね。


シャプールに出陣のことを伝えると、嬉しそうだった。

「俺がいってもいいのか!」

『紅炎がそう言ったからね』

初陣は済ませてるんだろう、というと力強く頷かれた。

『明日の早朝に出るらしい。今から私は軍議に出てくるけど、シャプールはどうするかな』

寝台で眠るイスファーンをシャプールは眺める。

「俺も行く」


軍議には軍師紅明、大将軍紅炎、将軍紅覇、そしてその家臣たちがいた。

私は今回副将となるらしい。

『お待たせ』

「遅いよーアスラ」

紅覇は口を尖らせて文句を言う。

私は軽く謝る。

「それでは始めましょう」

軍師である紅明が口をはさむ。

紅明は地図を広げた。

「煌帝国の西に広がる山地が今回の戦場です」

山地か、面倒くさいな。

「敵は少数民族、勝つことは簡単でしょう」

紅覇は笑う。

「楽勝じゃん」

「紅覇、まだ続きがあります。この少数民族、後ろには他の少数民族が多くいます」

「小さい民族でも集まれば大きくなる」

紅炎は紅明の言葉に付け加えるように言った。

「僕の魔装があれば楽勝ってのは変わらないよね」

紅覇は如意練刀を見せつけるように掲げた。

シャプールは魔装ってなんだ?と聞いてくる。
さっきの魔法の一種だと答えた。

『うまくいけば紅覇の眷属器も発動しそうだしね』

待って。
私を選ぶ必要ってまさか。

「気づくのが遅いですよ、アスラ」

「そういうことだ」

私は大きなため息をついた。

「僕のために頑張ってよね、アスラ」

紅覇の無邪気な笑顔。

シャプールは聞いてきた中で眷属器とはなにかを軽く理解したようで、気の毒そうにこちらを見上げてきた。

心配することないよと強がるが、さすがに苦笑は隠せていないようだった。



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