■ 和装
部屋で待機しとけよいと言われ、とある小部屋に案内される。
居候である以上あまり頼ってはいけないのだが、マルコは頑固なのかなかなか譲らない。
マルコの機嫌がだんだん悪くなってきたのでとりあえずいうことを聞くことにした。
部屋のベッドはレッドフォース号よりも大きかった。
しかしその扉からベックマンやシャンクスが出てくることは無い。
“碧、ベックマンに連絡をとればどうです?”
先程通信機をもらったでしょうと言いながら沖津風が現れた。
『ああ、そうだったな』
ショルダーバッグの中なら小さいかたつむりを取り出す。
『…使い方が分からないな』
沖津風も子電伝虫をのぞき込む。
『も、もしもし』
《………》
子電伝虫はなにも話さない。
それどころか目をつぶっている。
『ベックマン?』
《………》
子電伝虫はなにも話さない。
『とりあえず、マルコが戻ってきてからにしよう』
“そうですね”
沖津風と雑談をしていたらマルコがノックをして入ってきた。
「遅くなっちまった。すまねえよい」
『いや、大丈夫だ』
「よう、カラスの姫さん。やっと話せたな」
マルコの後から部屋に入ってきたのは和装の人物だった。
声は完全に男である。
しかし女物の着物を着て、軽く化粧をしている。
「俺はイゾウってんだ。よろしくな」
「こいつが連れてけってうるさいから連れてきちまった。すまねえ」
『その服…その服!どこにあるんだ!』
イゾウとマルコは私の発した言葉に驚く。
「その服って、この服かい?」
イゾウは自分の着ている服を指さしながら尋ねた。
「そんなにワノ国の着物が珍しいのかい」
『珍しいのではない。私のいた世界ではその服装が普通だったんだ』
イゾウは一瞬驚くが笑いだす。
「へえ、あんたの世界の話、少し興味があるな」
「おい話し込んでんじゃねえよい。とりあえず俺の服を返してくれ」
急いで羽織っていた服をマルコに渡す。
マルコは別のTシャツを私に渡した。
「これはナースから貰った普通の服だよい。能力を使う時は前の破れた服を着るしかないようだねい」
『ああ、借り物を傷つけるわけにはいかないからな』
「もしよければ俺が持っている着物を貸すぜ?着物だと下にさらしでも巻いときゃ姫さんの能力は使えるだろ」
イゾウの提案に頷くマルコ。
「元々着物を着てたんなら都合がいいな。機動性がいいのはイゾウを見れば分かるからねい」
ありがとよと軽く笑うイゾウ。
ちょっと待ってなと言い、部屋を出てゆく。
『それにしてもイゾウはなぜ私のことを烏だと知っているんだ』
「そりゃ甲板であんだけ派手に能力使えばな」
マルコは先程のことを思い出したようだ。
私も思い出し少し頭を抱える。
かなり目立っていたようだ。
『そうだ、この子電伝虫はどうやって使うんだ?』
さきほど通じなかったことを思い出し、マルコのまえに子電伝虫を出す。
マルコは子電伝虫をいじるとため息をついた。
「子電伝虫は小型な分電波を飛ばす範囲が狭いんだよい。さっきお前も上空から見ただろうが、レッドフォース号はかなり遠くにいるからな」
『そうか、それなら仕方ないな。この能力を使えるようになった後にベックマンに報告すればいいしな』
「お前さん、気になってたんだがあいつの女か?ベンベックマンから連絡が来てお前のことを話す時、いつもと声色が違ったからな」
顔に熱が集まるのがわかる。
こうなるのは何度目だろうか。
『違う!!』
「目が変わってるよい」
ニヤリと笑うマルコ。
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