■ 能力者

下りながら何気なくマルコに呟いた。

『不死鳥ってのは綺麗だな』

マルコは悲しそうに笑う。

「死なねえってのも大変だよい」

『私も死神だからな、同じようなものさ』

甲板に降りたち、互いに自然と笑みが零れる。


『私の食べた悪魔の実だが』

食堂のような場所へ行きながらマルコに尋ねた。

『私の元々の能力が関係しているのではないかと思ってな』

「どういうわけだよい」

『私の刀は風を操る。死神は様々な力を持っているんだ。空を歩くことも出来る』

マルコはかなり頭のいい様で、それだけで言いたいことを理解してもらうことが出来た。

「なるほどねい。お前が持っていない能力ならすぐに現れるはずだから、元々の能力と似たようなものじゃないかってことだよい」

『そのとおりだ』

食堂につき、マルコに誘導されて昼ごはんを取る。

そういえばヤソップにたたき起こされた後、何も食べてなかった。

トレーに載せられた麺…これはスパゲッティというものだっただろうか…とスープを眺める。

スパゲッティは白いクリームと絡めてあり、アクセントのカリカリのベーコンと黒胡椒が食欲をそそる。

スープはトマトだろうか。
とても美味しそうだ。

「よだれ出てるよい」

はっとして拭うとマルコはにやりと笑う。

「嘘だよい」

『なっ、ふざけるな!』

顔に熱が集まる。

その時だった。

「碧、その目…」

『は…?』

キッチンの綺麗に磨かれたシンクを覗き見ると、目が金色になっていた。

『なんだ、これ』

「どうやら碧の能力の発現に関わっていたのは怒りだったようだねい」

後は簡単だ、とでもいうように席につき食べ始めるマルコ。

目が気にはなるが空腹には勝てない。
同じように食事を始めた。


食べ終わるとすぐに甲板へ出て先ほどの話に戻る。

「さっきはすまなかったよい。だが怒りで何の能力か分かったのはラッキーだったよい」

『もう分かったのか』

「ああ、目だけが金色に変わったということは自然系でも超人系でもなく、動物系だろうねい」

マルコによると、普段の容姿が変わる能力者は動物系のすべての能力者と、一部の超人系のみらしい。

しかし目だけということは、動物系であることが高いという。

『動物か…。なんの動物なのだろうな』

「それが分かりゃ苦労はしねえよい」

目が金色の動物なんてあまり聞いたことがない。

今まで黙っていた沖津風が急に現れた。

“碧、あなたが悪魔の実を食べてしまったのはどうしようもありません。しかしどんな動物になろうとも碧は碧です”

微笑みをこちらに向ける沖津風。

“安心してください”

その言葉を聞いて目を見開く。
自分は変わるのが怖かったのだろうか。

『ありがとう、沖津風』

安心すると、急に力が抜けた。

すると今まで気づかなかった自分の中にあるものをうっすらと感じることが出来てきた。

何故だろう、自分の心がそれを望んでいるかは分からない。

マルコに惹かれてしまう。

惹かれてしまうといった言葉は少し違う。

仲間意識を持ってしまうというか、何故前から知り合いだったような感覚だ。

『マルコ、あの…』

「お前も気づいたようだねい」

『マルコもか』

マルコも少しその感覚を感じとっていたようだ。

「ちなみに俺が実を食べた時はすぐに変化できたよい。身体の中のものに身を任せるんだよい」

深呼吸をし、目を閉じる。

先ほど怒りで変わることが出来た。

さらに怒りを貯めれば変化できるのではないか。


尸魂界での出来事を考えた。

市丸の白哉への刺し傷。

藍染の行った諸行。

考えれば考えるほど許し難い。


「碧っ…碧っ!」

マルコの声で我に返る。

『す、すまない。前の世界のことを考えていたんだ』

「謝る前に、自分の姿を見ろよい」

疑問を抱きながら自分の身体を眺める。

いや、自分の身体はなかった。

そこにあったのは漆黒の身体に、その身体から伸びる同様に漆黒の翼。

『か、カラス…?』

「ああ、だがそれだけじゃないよい。足を見な」

足元を見る。
その足は立派な鉤爪がついていたが二本ではなく、三本が生えていた。

「ヤタガラスだ」

『ヤタ、ガラス…?あの伝説のか』

「そうみたいだねい。俺と同じトリトリの実幻獣種だから、似たような感覚があったようだよい」

人間の体に戻ろうと念じると、すぐに半分戻ることが出来た。

三本のカラスの足に漆黒の翼が背中から生え、まるで烏天狗のようだ。

「その身体だと刀も扱えるねい」

『ああ。能力はあとで分かっていくが、この姿になれるということがわかっただけでも違うな』

マルコが少し笑う。

「それにしてもたまたま食べた実が幻獣種っても、お前さん、ついてねえな」

『笑うな。私も驚いているんだ』

翼をなんとか消し、いつもの姿になる。

ふと違和感を感じ背中に手を当てると、服が破けていた。

「背中から翼を出せばそりゃそうなるよい」

服が何着あっても足りないな、とため息をつく。

「俺は手が翼になるから気にならないけどな」

『仕方ないな。我慢するか』

マルコは着ていた服を脱ぎ、私にかける。

「今から換えの服やるからそれまで隠しとけよい」

『感謝する』

ナースでいいか、いやあいつらの私服は露出が激しいしな…と独り言を言いながら上裸で歩き出すマルコ。

とりあえずその後を追ってついていくことにした。

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