■ 海楼石

マルコは鎧を着た大男を呼ぶと、私の前に立った。

「今から悪魔の実について教えるよい」

説明はベックマンから受けたものとほぼ同じもの。
ただし、マルコも能力者なのかその弱点まで詳細に教えてくれた。

「悪魔の実の能力者は海が苦手なんだよい」

近くにいた船員に一言声をかけて、マルコは手錠とバケツを用意した。

船員に海水を汲ませると、そのバケツを私に突き出してくる。

「実を食べてから一度でも海水に手を触れたかい?」

黙って首を振る。

「触ればお前さんが食べた実が本当に悪魔の実だったのかも一目瞭然だよい」

隣に沖津風が具象化して現れた。

マルコは目を見開く。

「そいつは、誰だよい」

『沖津風、私の刀だ』

さっき言ってた斬魄刀ってのはこのことかよいと納得した様子を見せるマルコと大男。

“碧に危害を加えたら貴方を殺す”

沖津風はキッとマルコを睨む。

「そんなことしねーよい」

とりあえず触ってみなとバケツを差し出すマルコ。

恐る恐るバケツの中の海水に手を触れる。

これでなんの影響もなければすぐにでもレッドフォース号に戻れるだろう。

しかし、その考えは無駄に終わった。

『っ!?』

一瞬で身体の力が抜けた。

崩れそうになる足を必死に支える。

それを見てマルコは笑った。

「能力者なのは間違いないようだねい」

『海に嫌われた、ということか』

マルコは頷き、下においてあった手錠を持つ。

その眉は寄せられている。

「この手錠は海楼石という海のエネルギーが詰まっている石で作られている。これで捕らわれたら終わりだと思え」

手錠を受け取ると、さきほどと同じ感覚が身体に走る。

『嫌な身体になってしまったな』

手錠を床に置き腕を組む。

沖津風が心配そうに顔をのぞき込んでくるが、大丈夫だよと軽く呟く。

「早速だが超人系の能力を見せてやるよい。ジョズ、頼んだ」

「ああ」

先ほどの大男、ジョズはこちらを見ると腕を広げた。

「こちらに斬りかかってくれ」

『いいのか』

ああ、と低い声で唸るジョズ。

沖津風を抜き、構える。

「碧の刀は短いねい」

『ああ、小太刀だからな』

そう言うと勢いよくジョズに斬りかかる。

たしかに手応えはあった。

一瞬の事だった。

がきんという鈍い音がし、ハッとして後退すると斬りかかった場所がキラキラと光っていた。

『金剛石か?』

「ああ、ダイヤモンドとも言うよい」

「俺は身体をダイヤモンドに変えることが出来る、超人系悪魔の実の能力者だ」

キラキラと光る身体を元に戻すジョズ。

確かにこの硬度ならば戦線ではかなり役に立つことだろう。

マルコがジョズにありがとよいと言うと、ジョズは頑張れよと言い残し、戻って行った。

『マルコは何の能力者なんだ』

「俺か?」

マルコはしばらく黙り込むと、思い出すように言った。

「お前、飛べたな」

『ああ』

上を指差し、先に飛んでろと言うマルコ。

頷き、瞬歩で高く飛ぶ。

死神の場合、霊子の足場を作ってその上を歩いているだけので飛ぶとは少し違うが。

船を目下に捉え周りを見ると、レッドフォースが遠 くに見えた。

あの船に戻るのはいつになるのだろうか。

そう考えながら私は笑った。

いつの間にか戻ることを考えているなんて、自分はどれだけあの男に惹かれているのだろうか。


ふと下を見る。

目に写ったのは美しい青い炎。

『綺麗…』

その言葉が口をついて出るほどに素晴らしかった。

その青い炎を纏っているのは、炎と同じ色の鳥だった。

見たことのある目元にはっとする。

『マルコ…?』

「ああ、そうだよい」

『その姿は、不死鳥か?』

マルコは鳥の姿から鳥人の姿に変化する。

「よく分かったな。俺は動物系悪魔の実の能力者だよい」

ボボッと炎を腕から出しながら少し笑った。

「この船には今は自然系悪魔の実の能力者は存在しない。エースってのがいたが今はいないよい」

『そのエースはどこに?』

マルコは少し眉をひそめる。

「ティーチって野郎が仲間を殺しやがった。その制裁だよい」

『なるほどな』

そういうことだ、といい降下してゆくマルコ。

その後をおった。



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