■ モビーディック

白ひげの船につき、ゆっくりと下りる。

シャンクスは歩くと同時に先ほどの覇気を船員たちに向けた。

ばたばたと倒れていく船員たち。

それを横目に捉えながら、私は真正面にいるとても大きな人物を見た。

『あれが白ひげか』

「ああそうだ」

シャンクスは白ひげの前に立つとすぐに話を始める。

私は他の船員からの視線で射殺されそうだ。

軽く周りを見渡す。

とりあえず一番実力があると感じた、金髪の髪をもつ船員の方に近づいた。

話し込んでいるシャンクスと白ひげは申し訳ないが放っておく。

『すまない、ベックマンから言われてこの船に乗ることになったんだが』

「ああ、あいつが言ってたのはお前さんかい」

体には大きな入れ墨が彫ってある。
おそらく白ひげのマークなのだろう。

「俺は一番隊隊長のマルコ。あんたは碧だねい」

私は軽く目を見開く。
一番隊、懐かしい響きだ。

少し山じいを思い出しそうになるが、必死にその感情を押し殺す。

『ああマルコ、これからよろしく頼むよ』

グララララという地響きのような声が聞こえ、咄嗟に振り返ると、白ひげの双眸がこちらを捉えていた。

「お前が赤髪が言っていた、不思議な力を持つっていう女か」

『碧という。自分の力を知るためにこの船に乗ることになった』

軽く礼をしながら淡々と話す。

シャンクスはその様子をじっと眺めていた。

「グララララ、面白い女じゃねェか。この船に乗るならお前は俺の娘なんだ!そんなに警戒するんじゃねェよ」

豪快に笑う白ひげ。

私は驚いてシャンクスを見る。

「白ひげはこういう男なんだ」

シャンクスは屈託のない笑みを見せる。

「親父のことは好きに呼ぶといいよい」

マルコも助言をくれる。

『それでは親父様、と』

私は深く一礼した。

グララララ、かしこまるんじゃねーよ!という声が上から聞こえる。

だがこの声色は満足気だった。

「途中乗船の野郎なんざこの船にゃ腐るほどいる!お前もすぐ慣れるさ」

再度頭を下げて礼を言う。

「そうだ、エースのことなんだが」

シャンクスの話に真剣な表情になる白ひげ。


急な話題転換に全く話の内容がつかめない。

要約すると、シャンクスの左目の三本の傷はティーチという人物が傷つけたものであり、ティーチの力が油断できないものであり、今エースをぶつけるべきではないということ。


危ないからこっちにおいでよ、と別の船員に連れられて二人から離れる。

「君も剣士なんだね!僕もなんだ!」

笑顔の少年。
腰には一本の剣が刺さっていた。

『そうか、名は?』

「ハルタっていうんだ!よろしくね、えーと」

『碧でいい』

「うん、碧だね!」

ハルタと話していると、急に殺気が立ち込めてきた。

咄嗟に甲板に目を走らせると白ひげとシャンクスが睨みあっている。

一触即発というところか。

急に二人が動き出す。

シャンクスの剣と白ひげの薙刀がぶつかり合い、立ち込めていた空が割れる。

「オヤジ!!」

「オヤジぃ!」

白ひげを呼ぶ声が甲板上から多く聞こえる。

『決裂したのか』

とりあえずシャンクスをこの船から遠ざけることにする。

いそいで詠唱をはじめ、シャンクスのみを空間転移させた。

ふっと消えるシャンクスを見て力を緩める白ひげ。

その目がこちらをとらえ、面白そうに笑う。

「お前がやったようだな」

『ああ』

白ひげはさきほど座っていた所に座り直す。

「アイツのこたぁもういい。まずは碧、お前について聞かせてくれねえか」

周りにいたとてもスタイルのいいナースたちが、急いで点滴の管を用意し始めた。

白ひげの近くにはマルコも控える。

他の船員は白ひげの戻れという一言で船室の中へと入って行った。

残ったのは十人程の船員。

その船員すべての戦力が高く、すぐに沖津風を抜く準備をする。

「名は碧といったな、その刀はお前の武器か」

十人のうちの一人、二本の剣を持つ大男が訪ねて来た。

面倒なのでここにいる者にはシャンクスとベックマンに話していたことを簡潔に話す。

鬼道などは省いた。

『…ということだ。私は違う世界から来てしまったのだが、悪魔の実というものを食べてしまった。その使い方を学びたいんだ』

黙って聞いていたマルコは、ふうとため息をついた。

「嘘みてえな話だが、ベックマンの真剣な口調からすると本当のことのようだねい」

「グララララ!おもしれえじゃねェか!マルコ、しばらくのあいだ碧はお前に任せる。教えてやれよ」

「オヤジ!!ったく、マジかよい」

髪をかきあげるマルコ。

それを見て剣を二本携えた大男が笑う。

「刀を使った修行なら手伝ってやろう!」

名はビスタだ、と名乗り船室に戻ってゆく大男。

それに続いて他の船員も戻ってゆく。

『皆、私のようなものに警戒心を持たなくてもいいのか』

「十分抱いてるよい。だが、お前から殺気が感じられないことも確かだからねい」

そういいながら白ひげを見るマルコ。

「コイツの部屋は俺の部屋の隣の物置を片付ける。早速今から悪魔の実について教えてやることにするよい」

白ひげは笑う。

「ああ、碧のことはお前が全てやるといい。俺に聞く必要はねェよ」

そう言いながら白ひげはナースを引き連れて自室へと戻っていった。

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