■ 白ひげ

日がとっくに登っている昼過ぎ、ヤソップが部屋のドアをガンガンと叩く音で目を覚ました。


急いでショルダーバッグを背負い、沖津風を佩刀する。

ドアを開き甲板に出ると、すでにシャンクスが船を出る準備をしていた。

「よう、おはよう碧!よく眠れたようだな」

あれだけ飲んでいたのにけろりとしているシャンクスを見て眉をひそめる。

この男の肝臓はどうなっているのだろうか。

「碧、白ひげの船はもうすぐ見えるはずだ。小舟を出す予定だったが、沖津風で運べないか」

ベックマンがかたつむりのような生き物を手にしてやってくる。

『ベックマン、それは?』

「電伝虫、通信道具の一種だ。これですでに向こうの船には碧が連れていくということの連絡はついている」

『随分と手回しがいいな』

ベックマンはふっと笑う。

「冷静さ、だからな」

ベックマンは左耳を見せてくる。
そこには黒い石が光っていた。

『付けてくれたのか』

ベックマンは、ああと呟くと、私の手に何かを置いた。

「もう一方はイヤリングに加工した。お前でもつけられるようにな」

『あ、ありがとう』

「右耳につけてくれ。そうすることでお守りになるそうだ」

思わず声に出して笑ってしまう。

『ベックマンがそんなことを言うとは思わなかったな』

「俺も自分で驚きだ」

私たちが顔を見合わせて笑っていると、シャンクスが申し訳なさそうに話しかけてきた。

「お前ら、仲いいのはいいが白ひげの船、見えたぞ?」

はっとして互いに顔を背ける。

「碧、やはりこの船に戻ってきてくれないか。俺の為でもあるが、もう一人お前を待っている人がいるんだ」

耳元でいたずらっ子のような笑みを浮かべたシャンクスを見て少しため息をつく。

『考えておくよ』

「頼む、あいつがあんな表情をするのは初めて見るんだ」

シャンクスは真剣な表情であいつと呼んだ男を見た。

『そうか…』

私は近づいてくる白ひげの船に目を移し、沖津風を撫でた。


白ひげの船が約1km先に迫ったとき、シャンクスが酒を担いだ。

「碧、そろそろいいか」

黙ってうなづく。

ベックマンから何かを投げられる。

見ると、先ほどの電伝虫の小さなものだった。

「子電伝虫だ。これで連絡をとれるはずだ」

『ありがとうベックマン』

少し笑うと、沖津風にたのんだ。

『沖津風、お願いするよ』

かしこまりましたという声とともにシャンクスと大きな酒が浮かぶ。

じゃあ行ってくるな!という声を甲板で驚く船員たちにかけ、ベックマンに目配せをするシャンクス。

同様に軽く目配せをすると、少し困ったように微笑まれた。


レッドフォース号から離れ、足場を作りながら瞬歩で飛ぶ。

「白ひげは一応敵だ。威嚇のために少々覇気を使うが大丈夫か?」

『覇気とはなんだ?』

シャンクスは風の中器用にあぐらをかきながら説明をする。

シャンクスの使う覇王色の覇気というものは、こちらでいう霊圧で相手にプレッシャーを与えるものに似ているようだ。

『今やれるか』

「ああ、やってみせてやるよ」

ぎろりとこちらを睨むシャンクス。

その瞬間背筋にぞくりと悪寒が走った。

咄嗟に沖津風の鍔に手をかける。

シャンクスはふっと気を抜き、破顔する。

「白ひげの船ではこれ以下の覇気を使うつもりだから大丈夫だな!」

『…さすが四皇だな』

「知ってたのか」

沖津風に教えてもらった、とスピードをあげる。

白ひげの船が近づいてきた。

「四皇なんて名前だけさ、今から会う白ひげは俺みたいなひよっこじゃねーがな」

急に真剣な顔になるシャンクス。

今から会う白ひげのことを考えながら、海上を飛ぶ。

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