■ 後の祭り

ベックマンによると、悪魔の実には大別して三種類があるらしい。

一つは自然の力を得る、自然系。

一つは動物の力を得る、動物系。

一つは超人の力を得る、超人系。

食べた実がどれに対応するのかは分からない。

『まあ食べてしまったものは仕方がない。私はこの力を受け入れるしかない』

シャンクスはうーん、と考え込む。

「手っ取り早いのは危険に身を置くことだが、碧の場合、その刀があるからな」

『シャンクス、私は人間ではあるが、死神でもある』

シャンクスの言い方では私には沖津風しかないように聞こえる。
私には死神の力もまだ残っているのだ。

「死神とはなんだ」

ベックマンは煙草に火をつけながら問う。


死神の説明を簡単にする。

おそらくこの世界は別の世界だということも、沖津風との推測を交えながら説明した。


信じられないといった顔をするシャンクス。

『死神の力を証明するのは簡単だよ』

煙草を潰し、新しい煙草に火をつけようとするベックマンを制する。

『その煙草、借りてもいいかな』

すっと手渡すベックマン。
腕を組み私の様子を眺める。

『破道の三十一、赤火砲』

指先から微量に放出するように調節する。
どうやら成功したようで、マッチ程度の炎が人差し指の先から現れた。

それで煙草に火を灯すと、ベックマンに渡した。

ベックマンはその煙草をくわえると、満足げに笑った。

「便利だな」

シャンクスは疑って悪かったよ、と眉を下げながら苦笑した。


「ベン、白ひげの船に碧を預けるのはどうだ」

いい思いつきとでもいうようにきらきらと目を輝かせるシャンクス。

今更だが、かなりいい歳をした大人がこんなに無邪気で良いのだろうか。
しかも、船長ときた。

「お頭がそうするべきと思うのなら」

ふーと大量の煙を吐き出す。

勝手に話が進み、とりあえず話の内容だけは聞くように心がける。

『白ひげって誰だろう』

“とりあえず、厄介ごとには違いないですね”

全くだ、と呟きながら沖津風の鞘を撫でる。

「悪魔の実の能力者が多いのはあの船だからな。島さえ分かれば碧には船は必要ないだろ?」

ちなみに場所さえはっきりとすれば、禁術で空間転移もできるのだがそれを伝えればさらに複雑になるので後で言うことにする。

「たしかにあの船は信用できる。しかし碧一人をあの船に向かわせるのはさすがに気が引けるな」

「だからこそ、俺がいるんじゃねーか!」

笑顔でこちらを見るシャンクス。

「あの時に、連れていくのか」

「ああ。あと二日後に接触予定だからな」

シャンクスは私の頭を撫でる。

まるで私を子供のように接する態度に少しイラつきを感じながら、シャンクスを見た。

『その白ひげと呼ばれる者の場所で、修行をしろということでいいか』

「ああ、理解が早くて助かる」

ベックマンはすまない、というように少し困ったように笑う。

ベックマンによると出航は明日の夜、この島の沖合で二日後に白ひげの船と接触するとのことだった。

『沖津風、白ひげについて調べておいてくれないかな』

“御意”

シャンクスは店主からさっき貰っていたのか、酒を煽りはじめる。

「碧も何か飲むか?」

『私は遠慮しておく。もう寝るよ』

ベッドに横になり、目を閉じるとすぐに眠気が襲ってきた。

今日会ったばかりの人物と同じ部屋にいるのに寝るなんて、自分でも肝が据わっていると思うが、寝込みを襲われても対処できるという自信があった。



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