■ 市場へ(side B)

お頭と俺は宿を出ると直ぐに道行く人にさっきの女の行方を聞いて回った。
目立った収穫は得られないが、そのような人物を見たという男性から微かな情報を聞き出す。

どうやらあの女は市場の方へ向かったらしい。


お頭と目を合わせ、すぐにその方向へと急いだ。


「ったく、あの子歩くの早くねーか?」

お頭は苦笑いをしながら市場を見た。

夕方をまわっているせいか、市場の店はほとんどしまっていた。

開いていた店に聞き込みに向かう。

肉屋は収穫なし。

魚屋も同様。

雑貨屋もだ。

俺は一つの考えにたどり着いた。

「お頭、おそらくだがあの女は調理をせずに食べられるものを買っているはずだ」


理由は簡単だ。

宿がないということはどこかで食事をするしかない。

市場へきたということは料理目的ではなく食材目的である。

調理ができないならば、パンやおにぎり、果物や野菜といった簡単なものを買うだろう。


そのことをお頭にいうと、納得された。

すぐに果物屋へ向かう。


「よう店主!ここに女の子来なかったか?」

店主は気前の良さそうな笑顔で受け答えをする。

「ああ、来たさ。たんまり金をくれたからたくさんサービスしてやったよ!」

お頭は子供が新しいおもちゃを見つけたときのようにニンマリと笑った。

「その子はどこへ向かった?」

俺が尋ねると、向こうだと指をさす店主。

その方向は森へと続いていた。


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