ふみさんリクエスト

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山奥に立つ、小中高の一貫学校。
高校からの外部生である俺は、この学校の感性に打ちのめされた。

右を見ても、左を見ても、前後でさえ広がる男達の恋愛。

それはもう、当然のようにいちゃついていた。そんなものに免疫があるわけない俺は慣れるのに一年を要した。今じゃ、生徒会や親衛隊共を見ても特に何も感じないまでに成長を遂げたが。
特にホモ的なものに巻き込まれることもない多少平和な一年を過ごし、今年もそうなのかな、なんて漠然とした考えを持っていた。
しかし、そんな考えは二年生になって2ヶ月で崩れた。

季節外れの転校生。

モジャモジャ髪に瓶底メガネ。容姿からするに、好感はもてない。
しかしだ。そんな親衛隊が一瞬でノーマークにするようなそいつは、驚きの早さで生徒会を虜にしていった。もう、そりゃ、生徒会に興味の無い俺ですら驚いた。

生徒会を崇拝する親衛隊は怒り狂った。まぁ、わからなくもない。ぽっと出のオタクルックス野郎に好きな人取られたら怒るよな。
そんなわけで、親衛隊は転校生を制裁してやろうと奮闘、しかし転校生は生徒会に護られているため制裁が出来ない。腸が煮えくり返るような気分を味わった親衛隊は荒れに荒れた。

ものすごい悪循環だと言うことが、脇で見ていた俺にもわかった。
見ていただけの俺は、関係無いか、とその時は思っていた。
それは直ぐに考え直すはめになったが。





身体の節々が痛い。既に誰も居ない教室の床に倒れながら、俺はこのまま居なくなってしまいたいと考えた。


転校生が、俺に構ってきた。
俺の何を気に入ったのか、毎日つれ回される日々。
当然のように俺が気に入らない生徒会からの罵倒暴行。便乗する親衛隊からの罵倒脅し暴行。
俺の身体はボロボロだ。


冷たい床が熱を持った傷を冷やしていく。
なんだかこのまま溶け込んで行ける気がして、俺は静かに目を閉じた。






目をうっすら開けた。頭が重たいのを我慢して、上半身を起こす。
寮に帰らなければ、と思った瞬間、俺の目はあり得ないものをとらえた。

木々が鬱蒼と生い茂る大自然。

俺が居たはずの教室の跡形は何一つなかった。
公舎の近くに森はあるが、ここまで暗くないし、何より今俺がいるここの方が不気味だ。
ここはどこだろう、と動くことすら出来ないでいると後ろから草木が擦れるカサカサという音が響いた。肩が震えたのを感じつつ、音に目をやる。



「やっと来たか…!」



ぽつりと呟いた言葉さえ頭に入って来ないほど、目の前の人物に釘付けになった。

さらさらと靡く銀髪は、どこまでも透き通っていて、ペガサスのような人だと思った。
学園にはイケメンは沢山居たが、この人は格が違う。そう、一瞬で感じた。

怪訝そうな顔をした俺を気にせず、イケメンは笑みを浮かべ近づいてきた。思わず後退る俺。彼は気にも止めていないのか、直ぐに俺の目の前までやって来た。



「…怪我をしているのか」

「え、…」



怪我は、確かにしている。服で見えない場所に痣が点々とあるのだ。
見えるような場所にはないはずだが、と疑問に思っていれば、彼が俺の腹に手を翳した。一番痣が多いところだ。



「かわいそうに…こんなにされて」

「え、あの、え?」

「私が治してやろう」



彼がそう言うと、光がぽうっと浮かび、腹の痛みが徐々に無くなって行った。
不思議な出来事に俺は目を白黒させた。
優しく微笑んだ彼は、俺の頬を緩く撫でる。



「歓迎するぞ。…どんなに君を待ちわびていたか!」



話が全くわからないまま、俺は彼に抱き抱えられる。彼の優しい香りに包まれると、なんだか細かい事はどうでもよくなっていく気がした。
俺の体を壊れ物を扱うように抱き締めた彼が何かを呟いた気がした。



「やっと手に入れた…もう離さない」



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平凡が王道に巻き込まれる過程を書きすぎて長くなりました…!本当はもう少し短い予定だったんですがどうしてでしょう…((
ファンタジーなお話はあまり書いた事無かったので楽しかったです!
企画参加及び、リクエストありがとうございました!




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