次の日。
緊急全校朝会が開かれた。心当たりしかない平凡とデブは、この際出ないでしまおうか、等と二人で計画をたてるが逃げ出す勇気などなく、結局クラスの皆と共に馬鹿みたいにデカイ体育館で整列していた。
そわそわと落ち着きない平凡は早く逃げたしたくてたまらなかった。デブはすっかり現実から逃避しており、みるくちゃんで頭を一杯にしていた。
ボンボン、というマイクの音に先程まで騒がしかった生徒たちは黙り、マイクの方に顔を向ける。
そこには生徒会長信部三春が立っていた。
親衛隊であろう生徒たちの悲鳴のような歓声に、平凡もデブも肩を揺らす。
その歓声を会長は片手で制し、シン、と静まり返ると同時に声を上げた。



「みなさん、おはようございます。急に召集してすみません。今日は、大事なお話があります」



会長の言葉に、生徒が再びざわざわと騒がしくなる。平凡とデブは、静かに会長を眺めていた。
会長が息を吸う音が鮮明に体育館ホールに響いた。



「信部三春は、今日をもちまして生徒会長を辞退いたします」



会長の言葉が反響した。
何拍か置いて、体育館が震えるほどの叫びが響き渡った。「やめないで!」など、悲痛な叫びや咽び泣くような嗚咽がたくさん聞こえた。
泣き崩れる生徒も続出しているようで、対応に追われる教師の姿が嫌でも目に入った。



「突然すみません。理事長や教師の皆さんにはもう了承を得ております。近いうちに新しい生徒会長を決める選挙が行われるでしょう。短い期間でしたが、ありがとうございました」



頭を下げる会長は、どこまでも会長らしくて、泣いていたり、引き留める言葉を叫ぶ者も黙ってその姿を見ていた。
「そして、僕個人のお知らせがあります」
頭を上げた会長の言葉に、生徒や更に教師までがざわめく。教師も把握していないような事を今、会長は言おうとしていた。
会長はマイクスタンドに刺さっていたマイクを取り、ステージから降りてきた。教師は何故か彼を止めることはしない。更にざわつく生徒たちも気にせず、会長は誰かに向かって歩き続ける。
そして、やっと会長は一人の生徒の前で歩みを止めた。



「僕は彼と付き合うことにするよ」



その生徒、平凡は隣に立って自分の肩を叩く存在に、軽い殺意を覚えていた。こんなにも萌えない展開ってありなのだろうか、と平凡は途方にくれる。
平凡は思った。会長はなぜ全校生徒の前でわざわざこんな告白してきたのか、嫌がらせか、と。
しかし会長は至って本気で、



「彼に手出しをしたら、わかってるね?」



会長のワントーン低い声に、平凡に対するブーイングがシーンとおさまる。静かに事の成り行きを見ていたデブは、平凡の可哀想な姿に冷や汗を垂らしていた。
「それじゃあ、行こうか」
突然会長が平凡の腕を引いて、体育館の出口に向かい始めた。いきなりなんなんだろう、と平凡は頭にはてなを浮かべる。
少し歩いて、適度に体育館から離れたところで会長は口を開いた。



「と、いうわけだから」

「意味わかんないんですけど…」



怪訝そうな顔を隠さずに平凡は言う。会長は笑顔で返した。「君が好きだ。それ以上もそれ以下もないよ」会長の断言に平凡は不覚にも胸の高鳴りを感じてしまった。



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てデブがモブに。なってしまったけど。デブにもいい人が現れると私は思ってます。いつか書きます








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