この学園の構造上、生徒会役員は部活に入ることが出来ない。理由は簡単なもので、学校行事の指揮を執るのは原則生徒会だからだ。部活などやっている暇がない。
つまり、信部三春が『漫画アニメ研究同好会』に入るのは不可能ということ。
学園で浮いた存在である平凡もデブも、流石にこの事は知っているようで気まずそうにお互いの顔を見合わせた。
どちらがその事を指摘するかアイコンタクトをとった結果、平凡が口を開いた。



「信部、会長。あの、生徒会役員は、部活に参加出来ないんじゃ、ないですか?」

「そうですね」



信部は頷く。
分かっているなら何で入るなんて言ったんだ、と平凡は眉間に皺を寄せた。ぬか喜びなんてごめんだ、とデブも思ったのだろう。漸く口を開いた。「じゃあ、なんで…」信部は笑顔のまま切り出した。



「簡単なことですよ。俺が生徒会を辞めれば、こっちに入れます」

「はぁ、?」



平凡とデブの声が重なった。二人の頭のなかはこうだろう。
『何を考えているんだ』『正気か?』
信部は余裕の笑みを絶やさない。その事から、二人は本気なのだとなんとなくだが悟った。
「でも、 」平凡が呟く。



「でも、生徒会って、そんな簡単に辞められるんですか」



当然の疑問だ。信部は生徒会役員の長、生徒会長。そう簡単に辞められるはずがない。
そもそも、この学園にいる大規模な生徒会長の親衛隊が騒ぐのは必至だ。あまつさえ、『漫画アニメ研究同好会』に入るため、などと知られれば平凡とデブの今後はないと言っても良いだろう。
その事に気づいた平凡は冷や汗を流す。

とんでもない人を誘ってしまった、と。

しかし、その事に気付いたからと言ってもこの有難い申し出を断ることはデブにも平凡にも出来なかった。相手は生徒会長。自分達よりも遥かに偉いことなどわかっているのだ。



「じゃあ、俺は早速理事長に交渉しに行ってきますね。結果は部室でお話ししましょう」



颯爽と立ち去る信部の背中を、二人とも呆然と見送る。そんな中でも、確実に不味いことになった事だけはわかった。








第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -