先ずは例のイケメンを探すことからデブと平凡は始めた。「本当にどんなイケメンか覚えてない?」とデブが平凡に聞く。平凡は頷いた。
二次元にしか興味が無いため、イケメンは皆同じ顔に見えるらしい。しかし、あのイケメンを見つけなければ話は始まらない。
手がかりなど無いも同然だが、二人は闇雲に探し始めた。
「あんな感じの奴か?」
「いや、もっとキラキラしてた」
イケメンはみんなキラキラだろ、とデブは思った。
しかし、先ほどのイケメンよりキラキラということは、平凡が出会ったのはかなりのイケメンだったのだろう。デブはそう推測した。
探すこと数分、体力のない彼らは既に探すのを諦めかけていた。二人で宛もなく廊下を歩くが、当たり前のように例のイケメンは見つからない。
「もう諦めようぜ?」
平凡が言う。デブは諦められないようで、うーん、と項垂れていた。
その時、平凡の肩を誰かが叩いた。教師だろうか、と平凡は振り向く。
「昨日ぶりですね。今日はどうかしたんですか?」
平凡とデブでは一生出せないであろうキラキラとした目映いオーラが、彼からは惜しみ無く流れ出していた。
昨日のイケメンだ、と平凡は思った。またデブも、こいつが例のイケメンか、と五歩ほど下がった場所から思った。
平凡はイケメンから少し距離をとり、「昨日はどうも、」と頭を下げた。イケメンはふふふ、と笑い「いえいえ」と言った。
平凡的にはここでさっさと会話を終了させたいところだが、デブが鋭い目付きで「部活に誘え」と物語っているため、平凡はイケメンの前から動けずにいた。
「あの、」
「なんですか?」
平凡は勇気を振り絞って声をかける。イケメンはすぐに反応した。
平凡は目を泳がせながら先を話し出した。
「あの、今俺達、同好会に入ってくれる人探してて、その、」
「へぇ、そうなんですか。何て言う同好会ですか?」
「漫画アニメ研究同好会…です」
イケメンはそれを聞くと、笑顔のまま言った。「俺が入りましょうか?」
願っていた言葉だ。平凡はかなり後ろにいるデブを見やる。デブは笑っていた。
交換条件、等と言わないところをみると昨日のあれは勘違いだったのだろう、と平凡は思った。
「ところで、あなたの名前は?」
肝心なことを聞き忘れていた、と平凡がイケメンに聞いた。イケメンは笑顔を崩さずに言った。
「信部三春、です」
「へぇ、え、え!?」
信部三春、それはこの学園の生徒会長の名だった。
←→
←