納谷くんに連れてこられたのは、校舎裏だった。一年中じめじめしていて、薄暗いから人が寄り付かない。だからここは人を呼び出して話すのには最適だ。
こんなところで彼と二人なのはなんとなくだが嫌な気がした。



「どうしたの、何かよう?」



少し突っ慳貪な態度になってしまう。納谷くんはいつもの笑顔とは違う笑顔で口を開いた。「わかってるくせに」おれは思わずはぁ?と声をあげた。納谷くんは更に続ける。



「俺に嫉妬させるために、アイツと仲良くしてるんだろ?俺はずっと向井が好きだったんだよ、一年時、ノートを渡してくれたときからずっと、ずーっと好き。向井だって、優しくしてくれたじゃないか」



それとこれとは違うだろ、と思ったが、納谷くんの顔がどんどん悲痛に歪んでいくから何も言えなくなった。納谷くんに腕を掴まれて、胸に押し付けられた。納谷くんはいい香りがした。



「勝手にキスしたりしてごめんね、でも好きなんだ

向井、俺のものになって」








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