あれ、到頭耳が腐ったのだろうか。不良の口から『みるきぃ☆まじっく!』なんて言葉が聞こえた気がしたぞ。
暫く答えられないでいると、不良はさらに続けた。



「俺、買い損ねたんだ、めめちゃんのフィギュア…、だからもしお前が良かったら譲ってほしい」



そんなハスキーな声で"めめちゃん"って言われても俺困るんだが。
…いやでも、キャラクター名を言えるのだから、この不良…みるきぃ☆まじっく!、略してみるまじのファンじゃないか?
みるまじファンに悪い奴なんていないと、俺は飲料水よりも澄んだ心で信じている。見てくれはこうでも、みるまじファンなら全然大丈夫だ。寧ろ親近感わきまくり!



「…うん、いいよ。君にこのめめちゃんを譲ろう」



頷きながらめめちゃんを差し出した。
みるみるうちに目を輝かせた始めた不良が、俺の手ごとフィギュア掴んだ。手でけーな。



「ありがとう、お前いい奴だな」



にこり、と微笑む不良。
その綺麗な笑顔に、俺は不覚にも心臓が大きく波打ってしまった。
いや、別に恋におちたとかじゃあないから。断じて違う。…それより、早く帰ってサークルの皆とこの感動を分かち合いたい。しかし、不良が手を離す気配はなく、じっと俺を見たまま固まっていた。
自らの手が汗ばむ感覚を不快に思いながら口を開いた。



「あの…どうかしました?」

「いや、」



野郎が二人でフィギュアを掴みながら見つめ会うシュールな光景。幸い?路地裏なので人通りは無いが、流石に気持ち悪い。
早く離して欲しくて手を引いて見たところ、不良に手首を掴まれた。
あっぶね、めめちゃんの事落とすところだった。安堵の息をつきつつ、不良に再び視線を向けた。

熱の籠った眼差し。

背中がぞくりと震えた。



「めめちゃんより、あんたが欲しい」

「は、」



はぁぁぁあ!?








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