「と、とりあえず、酷くなったらあれなんで寝ててください」



話をそらすように俺は会長をベッドルームに引っ張っていく。何の抵抗もせずに会長はベッドに寝転がった。
「そうだ、お粥作りますよ」
俺は閃いて、手を叩きながら言った。すると、会長が不思議そうな顔をするので、俺も首を傾げる。
もしかして。「お粥、わからないですか…?」
こくり、と会長が頷いた。…この世にお粥を知らない人がいるのか、と俺は軽い絶望を覚えた。



「…風邪にとってもいいんで、これを気に是非覚えてください。キッチン借りますね」



そう言い残して、俺はベッドルームから出た。

キッチンに来て、まず冷蔵庫の中身を確認した。粗方食材が揃っている辺りが金持ちっぽいよなぁ、とお粥にいれるものを拝借した。

やっと作り終わり、俺はふう、と息を吐く。お盆に出来上がったお粥を乗せて、俺は会長の寝ているベッドルームに向かった。



「会長、出来ましたよ」



でっかいベッドの中心の膨らみに声をかけるが、返事がない。膨らみを覗き込めば、会長が静かな寝息をたてていた。
起こしたら可哀想かな、とは思うがお粥が冷めてしまうしなぁ、と俺は会長を起こすべきか本気で悩んだ。
うんうん唸りながら考えていれば、会長が寝返りをうったあとうっすら目を開けた。



「あ、会長。起こしちゃいましたか?」

「……」



寝ぼけているのか、とろんとした瞳で会長は俺を見上げた。「おかゆ、出来たのか、」頷くと、会長は上半身を起こした。
やはり何か色気を感じる。
あ、と口を開けた会長に、俺は頭を横に倒した。会長はにやり、と先程までの病人らしい顔つきから、いつものそれへと変化していた。



「看病には、あーん、が付き物と聞いたが?」



それは、誰情報ですか会長。








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