会計とのコンタクトは見事失敗に終わり、俺はなんとも微妙な気分でいた。
気晴らしにでもと、大和とその取り巻きを眺めようとしたが、肝心の大和が見つからなかったため、諦めて校舎裏に来た。
そこは、滅多に人が来ないため落ち着くには最適な場所だった。
俺は地面に腰を下ろすと、ため息を溢した。
ふと、視界に茶色いふわふわしたものが入る。
それに焦点を合わせれば、そこには子犬が尻尾を振って俺を見上げていた。
なんだこの可愛い生き物は。
可愛さのあまり、その小さい体を抱き上げれば子犬は俺の頬を舐めた。
可愛いすぎる!
思わず締まりの無い顔をしていれば、すぐそこで何かを落とす音が聞こえた。
そっちに目を向ければ、目を見開いたワンコ書記がいた。落っこちているビニール袋からは、犬用の餌が覗いていた。



「石橋、和哉……」



俺の名前を書記はぽつりと呟く。
名前を覚えていた事に、正直びっくりした。
書記はビニール袋を拾い上げると、俺の目の前に腰を下ろす。何か嫌みを言われるのだろうかと、思わず身構えた。



「…好きなのか」

「へ?」

「犬」



ぽつりぽつりと書記は喋る。
想像していたものとはかけ離れた言葉に、呆気にとられた。そして、書記の問いかけに頷く。
犬に限らず、動物はすきだった。
書記は、嬉しそうに目を細めた。男前だ。
かと言ってときめくわけもないので、俺は犬の頭を撫でるのに勤しんだ。








人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -