部屋に入ると、靴おき場に見知らぬ靴が揃えてあった。俺のよりも幾分でかく、何よりピッカピカだ。俺のくすんだローファーとは格の違いが一目瞭然である。
同室者である大和の靴だってこんなにでかくはない。そもそも大和はスニーカーばかり履いている。

じゃあ誰だ。

いきなりの恐怖にぞぞっ、と背筋が震える。
本当に誰のなのか心当たりが無いため、俺は靴も脱がずに立ち往生した。このまま立ち去ってしまおうかとか考えていたら、共用スペースへと続く扉が突然開かれた。



「うげ!!不良!!」

「あ゙ぁ!?」



思っていた事が口から無造作に飛び出た。
いや、だってさ、こんなピカピカなローファー見たら誰だって生徒会のメンバーとかを思い浮かべるだろ。不良がローファーとかシュールだ。そんな足元で喧嘩出来んのかよ、と半分現実逃避で考えていると、本日会ったのが二度目の不良は俺に迫ってきた。怖い。



「な、なんでしょか」

「……こないだの礼だ」



がさっ、と何かを押し付けられる。この形の箱、まさか。



「ケーキ?」



不良は俺の呟きに赤い顔をくわっとさせる。そしてそのまま逃げるように部屋を出ていった。
すっかり忘れているものだと思っていたが、どうやら不良は俺の予想を遥かに越えた律儀のようだ。
とりあえずケーキを冷蔵庫に入れた俺は、思わずくすりと笑った。








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