ぶつかったのは、一匹狼不良だった。
俺を見下すその視線の鋭さとか、ものすごく逃げ出したい。
かと言って、後ろには爽やかがいるし、奴に捕まるのも御免だ。
どうやって二人から逃げるべきか尻餅をついたまま考えていれば、爽やかに脇辺りを掴まれて強制的に立たされた。



「お、阿部だ」

「…なにしてんだお前」



俺をちらりと一瞥しながら不良が爽やかに問いかけた。爽やかは「うーん」とか笑いが含まれた声を上げた。



「俺はね、石橋のけつを追いかけてた」

「は?」



……なんでこう、誤解を生むような言い方をするんだ。
後ろの爽やかを睨めば、「だってそうだろ?」なんて言われた。そうじゃないと言えない自分が悲しかった。
怪訝そうな顔で俺を見やる不良。なんで俺を見るんだ。爽やかを見るところだろ。



「…お前ら付き合ってんの?」

「え!?」



なんて迷惑な勘違いを!
慌てて否定しようとしたら爽やかに口を塞がれた。
ふが、なんて間抜けな声をあげつつ、どういうつもりだ、と爽やかを見上げようと顔を捻った。



「どう見える?」



不良を挑発するような口調と顔つきに、俺は肝が冷えていく。
不良は眉を寄せて不愉快さマックスみたいな顔をしている。俺を挟んで喧嘩するな。



「…知らねーよ」

「はは、じゃあ俺たち行くから」



背中を押され、無理矢理歩かされる。
結局爽やかに捕まってしまった気がするんだが。








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