やはり騒ぎだした不良は何時もより一際うるさかったため、消毒液を傷にぶっかけてやった。びくり、と肩を震わせた不良は先ほどが嘘のように黙った。相当染みるのか、若干涙目だ。
俺はそんなことも気にせず、自分にしてはてきぱきとした動きで手当てを行っていった。

数分後、やっと終わった手当てに、俺は額の汗を拭う。多少不恰好だが、素人にしてはうまくできた。はず。
先ほどからやけに静かな不良を不審に思いながらも、今度こそ教室に戻ろうと踵を返したときだ。
ぎゅ、と俺の腕を掴む手。大和に掴まれて痣になった場所を握られたから、俺は少し涙目だ。
抗議してやろうと振り返れば、深刻な顔をした不良が、眉間にしわを刻んでいた。



「…どういうつもりだ」

「……なにが?」

「なんで手当てなんてしたんだよ」



手当てしてもらっといて、なんでコイツ凄んでんだよ。
呆れつつ、俺は「別に意味は無い」と答えた。
更に深くなった眉間のしわを見るところ、俺の返答が不満だったらしい。



「そんなはずねぇ!俺はお前を邪険にしてたんだぞ?そんな奴のこと……」



邪険に扱ってる自覚はあったんだね。
そんな事を思いつつ俺は到頭苦笑をもらした。それを見て、意味が分からないと言いたげな不良。先ほどからそんな感じの顔しかしていない気がする。



「本当に、意味は無いから」



俺は不良の手を払って、再度同じ言葉を並べた。
不良は益々怖い顔になったので、俺は早々と退散することにした。



「借りは必ず返す!」



俺の背中に向かってそう叫んだ不良を一瞥することもなく、俺は保健室を出た。
意外と律儀だよなぁ、と不良の事を思いだして少し笑った。








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