「あ、……」

「あ?」



副会長から離れて、教室に戻ろうとしたときだ。小さな呟きに気づいた俺は、思わず振り返る。そこには、ワンコ書記である花家がいた。

書記は俺と目が合えば、泣きそうな、けれどどこか安心したような顔を浮かべた。
そんな表情は、俺ではなく大和に向けてください。



「石橋、」

「な、なんでしょか」



ずい、と顔を近づけた書記はなかなか口を開かない。
鼻がぶつかりそうな程に近いこの距離に俺は一歩一歩、後退る。書記も一歩一歩近づいて来るので、全く意味を成さなかったが。



「犬、が……いなくなった」

「え、?」



犬とは、校舎裏にいたあの子犬の事だろう。
今にも泣きそうな情けない顔を浮かべる書記に、俺は声をかけた。



「いつから、いないんです?」

「今日、見たら突然…いなくて……」

「とにかく、探しましょう。俺も手伝うんで」



書記から一歩離れそう言えば、書記は情けない顔で笑顔を作ると、首を大きく縦に振った。

取り敢えず二手に別れる事にし、俺は校舎裏を確認してみる事にした。
子犬なのだからそう遠くには行っていないはず。
俺は走り、校舎裏を目指した。








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