「よくやったぞ石橋」
俺が書記と子犬と別れたあと、いきなり現れた会長はそう言った。
言葉の意味が分からず、俺は頭を疑問符でいっぱいにした。
「爽とは少し進展したようだな」
「爽?」
「花家……書記だ」
「あ、あぁ書記の事だったんですか、誰かわかんなかったです」
俺が苦笑いを溢しながらそう言えば、会長は綺麗な顔を歪めていた。
「お前、まさか生徒会役員の名前…知らないのか」
俺は当たり前のように頷けば、会長は信じられないと言ったように頭を抱えた。
大体、俺は興味が持てないことにはとことん無関心なため、大和の取り巻きの名前をいちいち覚えるつもりはない。言ってしまえば、大和が皆に囲まれるのを眺められれば満足なのだ。
もちろん、目の前にいる会長の名前も知らない。
「お前。今日中に役員全員の名前覚えろ」
「え……」
俺は自分の顔がひきつるのを感じた。
自慢じゃないが、俺は人の名前を覚えるのが酷く苦手だ。
大和の名前だって、総受けだからと辛うじて覚える事が出来た。一押し攻めの会長の名前でさえ覚える自信がない。
「……お前さ、まさか俺の名前も…」
「……知らないです」
こんなに項垂れる会長は初めて見た。
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