「なぁキスしちゃうぞ?」
歩みを止めた間野につられて俺も足を止める。間野は俺の両頬を手で包み込みながら呟いた。鳥肌が立つ。
てかもうこれじゃ友達とか関係ないじゃないか。只のキスする宣言だ。
「や、めろよ、間野くん」
「んーん、止めない」
ニヤリ、間野は嫌な笑みを浮かべた。
「友達だよね?」
間野が更に顔を近づける。鼻がぶつかった。
これは流石に不味い、と俺は息を飲む。
「わ、わかった。俺たちは友達だ……」
諦めたように呟けば、間野はにんまり嬉しそうに笑顔を作るとやっと顔を離した。
完全に脅された。
「じゃあこれからは一緒に帰ろうね」
「え…」
「昼も一緒に食おーね」
「えぇ…」
友人上林の顔が頭に浮かぶ。
すまん、俺はこれからお前と絡むことが激減するだろう。
上林よりも自分の唇を優先した俺は、間野の言葉に渋々頷いた。
満足と言った様子で、間野は俺を見やる。くそ、綺麗な顔だな。
「そういやヨシナガくんって下の名前なんなの?」
「?…匠だけど」
「タクミ」
「…うん?」
返事を返せば、間野はふやけた様な顔をした。変な奴だ。
「タクミタクミ、俺の事は翔太郎でも翔ちゃんでもなんでもいいからね」
遠回しにあだ名で呼ぶことを強要されて、微妙な反応を返す。
てか俺、間野と普通に喋れるじゃん。
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