「弟…?」



素直に驚いた。
そんな事実は全く知らなかったので、目の前の弟くんに目を向ける。
確かに、かなり似ている。風貌は、間野よりもチャラついていて、言葉使いも然り。



「あっれー、地味男くん、兄貴の事知ってるん?俺はね間野凛太郎っての。凛ちゃんって呼んでね?」

「はぁ…?」



とりあえず頷く。
凛ちゃん…女みたいだ。



「凛太郎やめろ、吉永が困ってんだろ」

「蓮さーん!"凛ちゃん"か"凛"って呼んでくださーい」



苦笑いを浮かべた凛太郎が、安孫子の肩を叩く。
それを鬱陶しそうに見る安孫子。どうやら、いつもの安孫子に戻ったようだ。



「そ・れ・よ・り!兄貴知りません?」

「あ?間野か?」



はい、と少し神妙な面持ちで凛太郎は頷く。
妙に思ったのか、安孫子は理由を促した。



「…兄貴が、女と縁切ってるのは知ってますよねぇ?」

「あぁ」

「そんなかにぃ、ちょっと頭いっちゃってる女がいるんすよ〜」



嘆息を溢した凛太郎は更に続けた。顔には微かな影が差している。



「その女ぁ、自分が兄貴と付き合ってるって嘘言いふらしてるみたいでぇ、兄貴には子供ができた、とかぬかしてるみたいだしぃ…。でも兄貴はその女とヤって無いって言ってるんだよねぇ、マジキモい越えてこえーんだけど!」



ひぃぃ、なんて言いながら凛太郎は腕を擦った。鳥肌でも立ったのだろう。
隣であぐねている安孫子が、口を開いた。



「…その女、名前は?」

「名前?確かぁ…白鳥?」








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