「隣、座るぞ」



安孫子が隣に座った気配を感じ取り、俺は身を固くした。
どうか泣いていたのがバレていませんように。と、俺の儚い願いも届かず、差し出されたティッシュが何もかもを物語っていた。
あぁ、もう。恥ずかしい。
途端熱くなる顔を誤魔化す如く、俺は多少乱暴にティッシュを受け取った。
正直、ティッシュは有り難かったので鼻をかんだりなんだりしていたら、安孫子の大きな手が俺の頭に重なった。
思わず、鼻をかむポーズのまま安孫子に目をやる。
心配そうに揺れる瞳は、俺の心を徐々に鎮静させていった。



「目。真っ赤だな」

「……うん」



涙に濡れた声で返事を返す。
安孫子の指が、目元に触れた。ピリッと、小さな痛みが走り、擦り過ぎたんだな、と思った。
安孫子が目元を触るのを、甘んじて受け入れていると、安孫子が息を吐くのが聞こえた。
そおっと目を開ければ、やけに切な気で、苦しそうな顔した安孫子が見えた。



「……なんで、安孫子が泣きそうなの」

「うっせー…」



少し潤んだ瞳を泳がせた安孫子の頬は少し赤い。いつもとは全く違う安孫子に、俺は頬を綻ばせた。
安孫子蓮、友情に熱い男である。



「なぁ、吉永」

「ん?」

「俺なら、お前を泣かせることなんてさせねぇよ」








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