俺はいつの間にか、ベンチに座っていた。どうやって辿り着いたのかは定かでない。
『翔太郎だって、迷惑してるのよ』
頭の中で、白鳥さんの言葉を反芻するように、繰り返された。
すると、不思議な事に彼女の言葉はどこか真実味を持って、俺の胸に焼き付いた。
間野は、俺が迷惑だったんだ。
やっぱり、俺だけが間野と仲良くなれた気でいたんだ。俺の、一人相撲だったんだ。
間野は、そんなこと少しも、思ってなかったんだ。
「あ……」
頬を伝ったそれに気付いて、慌てて拭う。けれど、それは止まるどころか量を増していった。
いつの間に、俺は間野の事をこんなに考えていたんだろう。
あんなに関わりを避けていたのに、今になって、凄く好きな友達になっている。
現金な奴だ、って思った。
「吉永……?」
ビクッ、と体が反応したのがわかった。
この声、安孫子だ。
俺は慌てて涙を拭って、俯いた。
最悪。こんなダサイところ、見られたくないのに。
どこかに行ってくれ、という俺の気持ちは1ミリも伝わらず、安孫子がだんだん近づく足音だけがその場に響いていた。
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