安孫子に貰ったお菓子は美味しくいただいた。さすが行列が出来るだけ違うな、かなり美味しかった。
と、母に思わず感想を述べたのがまずかった。
母はどうやらこの店を知ってるようで、俺の話を聞いて大層驚いた。まぁそこまでは別に問題ない。

問題はここからだ。

何かを履き違えた母は「お返しに手作りお菓子を!」なんて言い出した。
行列の出来る店の商品と、男の手作りの菓子が同等とは到底思えないが、やけに張り切った母に反論できる程俺は強くなかった。


やけに可愛らしいラッピングを施されたクッキーは、お陰さまで非常にうまくいった(むしろ母の作品だ)。
こんなお返しでいいのか未だに疑問だが、作ってしまったのだから渡してしまおう。安孫子が嫌そうだったら、自分で食べてまたお返しは後日だ。俺は鞄にクッキーを丁寧にし舞い込んだ。



「はよぉ、タクミ」

「おはよう」



間野と挨拶を交わし、前の席の安孫子に目を向けた。広い背中が目に入る。
俺は安孫子の席に近づき、突っ伏している人物を覗きこむ。寝ているのか微動だもしない。
この分だと当分起きないだろうか、と思考を巡らせつつ俺は自らの席に座った。



「レンになんかよーじ?」

「あぁ、うん、ちょっとね」



怪訝な顔をした間野を一瞥、早く安孫子起きないかなぁと思った。








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