「タァクミ!」
背中から伝わってきた衝撃に、俺は反応すらできなかった。
頭をぐるぐると回る言葉に、戸惑う。
白鳥さんと間野は付き合っているのだろうか。
それだけが何故か気になって、授業が耳に入らなかった。
反応を示さない俺を不審に思ったのか、間野は俺の背中から離れると俺の顔を覗きこんだ。
距離の近さに、思わず息を呑んだ。
「タクミ、どうかした?」
心配そうに眉を垂らして、間野は俺に声をかける。俺は何とも言えずに、押し黙った。
本人に、聞けば済むのに。
何故か、俺の口からは聞けなかった。
間野は俺の腕を掴むと、その透き通った瞳で俺のそれを見つめる。俺はその瞳を反らすこと事さえ出来なかった。
「なんか、あった?」
「っ…」
優しい声色に、思わず顔をしかめた。
その時、首もとを何かに引っ張られた。
俺の口からは蛙が潰れたような音が出た。
「間野、吉永借りんぞ」
頭上からは安孫子の声。どうやら俺の首に巻かれているこれは、安孫子の腕のようだ。
間野の返事を待たず、安孫子は俺を引きずるようにして教室を出ていく。
間野は、何も言わずに眉を寄せたままだった。
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