自分の部屋が、こんなにも居心地が悪く感じたのは初めてだった。
部屋には俺と間野の二人だけだ。
まるでこの部屋だけ切り取られたように静かだった。



「……タクミ、」



俺のベッドに腰を下ろした間野を、ゆったりとした動きで見やる。
真面目な顔をしていた。
その表情に、不安や、よくわからない感情が俺の内側で暴れる。
嫌な緊張感に俺の心臓は素早い鼓動を刻んでいた。
間野は、その固く閉じられた形のいい唇をゆっくりと解いていく。



「俺、タクミのこと、」

「匠ー!!ご飯出来たわよー!」



間野の言葉を遮るように聞こえた母の声。俺は慌てて返事を返した。

正直、母に感謝した。
あの緊迫した空気に耐えきれなかったのはもちろん、間野の言葉を最後まで聞いていたら、俺は越えてはならないものを越えてしまう気がした。


俺は間野と一緒に居間へ向かうと、笑顔が眩しい母が待っていた。
間野を家に入れるときもこんな感じだった気がする。
やけに上機嫌で、浮かれていた。
まあ、大方の理由は俺が珍しく友達を家に連れてきたからだろう。
しかも間野というイケメン野郎だから、余計テンションが上がったと見える。

特にそれを突っ込む気のない俺は、そんな母の横を過ぎて食卓についた。
やはりカレーだ。



「いいんですか、俺も食事を一緒して…」

「いいのよー気にしないで、もう!」

「ありがとうございます、お母さん」



後ろに目をやれば、爽やかな笑みを浮かべる間野と、年甲斐もなく頬を染める母。
てか間野、なんでお前が"お母さん"って呼ぶんだ。
そんな考えを巡らせつつ、早く飯にありつきたい気持ちだけが俺の中で募っていった。








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