カレーの材料の入った袋を手に下げて、間野と二人で歩く。
気づけば辺りは橙色に染まっていた。
「…じゃあ俺はこっちなんで」
間野から離れ、交差点に向かおうと足を動かせば、すぐにそれは叶わなくなった。
俺の手を握った間野は、変わらない人懐っこい笑みを浮かべている。
「タクミ、送るよ」
思わず顔を見つめる。
…男を男が送る?
必要無いだろう、と意味も込めて瞳を見つめれば、「こっちだよね」そう言って間野は交差点に足を進めた。
俺は口にだす事も出来ず、何処か他人事のように引かれる自分の手を眺めていた。
「へー、ここがタクミの家かー」
感慨深いと言ったように間野は俺の家を仰ぎ見る。
あれよあれよといつの間にか俺は自分の家についていた。
もちろん、送ると言い出した間野と一緒にだ。
まさか家に上がったりしないよな。
俺が間野に訝るような視線を投げ掛ければ、間野は眩しい位の笑顔を浮かべた。
「せっかくだからお邪魔しちゃおうかな」
「やっぱり!」
俺の悪い予想は、見事ど真ん中に的中。
玄関へと足を運ぶ間野の腕を掴もうとするが、既に遅かった。
ガチャリ
扉が開く音に、俺の思考が鈍る。
嗚呼、これなら無理にでも送ってもらうのを断るべきだった。
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