現実なのか、これは。

間野に手を引かれた俺は、本来一人で向かうはずだったスーパーに来ていた。

完全に俺らは浮いている。

理由なんて明白だ。
男が二人で手を繋いでスーパーに来ていたら、まぁそういう風にしか見えないだろう。
道行く奥さんの皆が皆、俺と間野の繋がれた手を見ていた。



「ま、…翔太郎くん。手」

「なに?」

「…手、離して」

「なんで?」



なんでってそりゃ、視線に耐え難いからに決まっている。
立ち止まった間野は俺の顔を見ると、俺の手を掴む力を強くした。
離してはくれなそうだ。



「……まぁいっか…はい」



数秒間見つめあったあと、間野は諦めたように俺の手を離した。
これが俗に言う目だけでの会話だろうか。
途端、手汗のスゴさに気づいて苦笑い。

とりあえず服で手汗を拭い、俺は母に渡されたメモを取り出す。



「えーと…じゃがいも、ニンジン…玉ねぎ…」

「カレー?」

「…そうっぽい」



そうか。今日の我が家の夕食はカレーか。
確か、先週の日曜日もカレーだった気がする。
やはりカレーは作り易いんだろうなぁとぼんやり思った。

ふと、やけに静かな間野に目を向ける。
神妙な面持ちで俺の手にあるかごを凝視していた。



「…翔太郎くん?」

「ねぇタクミ。ちょっとオレのこと見ながら"あなた"って言ってみて」

「……あなた?」



吃驚したような顔をして、間野は頬を染める。
イケメンの考えていることはよくわからない。








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