安孫子に乱された土曜日が終わり、今日は日曜日。
気をとり直して、俺は母のパシリもとい、お使いに出ていた。
近くのスーパーに向かう道中、なにとも言えない寒気に襲われる。嫌な予感がするぞ…。



「タックミ〜!」



背中に衝撃。

聞き覚えのある声に俺の体は強く反応を示した。
緩慢な動きで後ろを見れば、やはり予想通りの人物が立っていた。



「間野くん…」

「翔太郎」

「間野く」

「しょ・う・た・ろ・う」

「翔太郎くん…」



どんだけ名前で呼ばせたいんだ、と思いながらも俺は名字で呼ぶのを諦めた。
でも呼び捨ては出来ないので、"君"を付ける事を忘れない。



「"くん"なんて要らないのに…まぁいいや。てか奇遇だねー」


ニコニコと笑顔を浮かべつつ、間野は俺の肩に手を回した。
こいつ、肩に手を回すの好きだな。
然り気無く俺は間野から距離を取る。



「何してんの?一人で、散歩?」

「…う、まぁ、うん」



お使いと言うのも何処か恥ずかしかったので、言われた言葉に頷く。「ふーん」興味の無いような声が帰ってきた。
何で聞いたんだよコイツ。



「じゃあ今から遊びに行こう」

「えぇ……!?」



昨日の安孫子と同じような言葉に、俺はデジャブを感じた。

と、いうか。
今からは絶対に無理だ。

実際の俺はお使いという重大な任務に縛られているわけで、このままのこのこ遊んで帰ってきた時には母に殺され兼ねない。

変なプライドを優先して、散歩なんて言葉に頷くべきじゃなかった。かなり後悔。



「…いや、でも、ま……翔太郎くん、忙しいんじゃない?」

「…まぁ先約は居るけど断ればいいし」



俺のためにそこまでしなくても。

早速携帯を弄り始めた間野に、俺は慌てて制止をかけた。



「ま、まま待って!俺!散歩という名の買い出しがある!遊べない!断りのメールとかはしなくていいから!」

「あ、そうなの?買い出しかぁ」



俺の制止も無視して携帯を弄ったまま声を上げた。
…すっごい高速で指が動いている。メールだろうか。
その速さに呆気にとられてしまい、俺は何も出来ずに高速で動く指を眺めていた。

パチン

携帯を閉じる音で、俺はハッと我にかえった。
間野を見上げる。
なんかすごくいい顔してるんだけど。



「じゃあ行こっか」



何処にですか?








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