「……いや。いやいやいや、今の女の子!いいのかよ、追いかけなくて!」



俺の予定なんて聞いてる場合じゃないだろ!
俺が女の子が走り去った方を指差しながら声をあげると、安孫子はキョトンとした表情をする。イケメンはそんな顔も様になるんだな。



「いいよ、別に」

「よくないだろ!泣いてたじゃん、あの子!」



俺なりの正論を安孫子にぶつける。すると、安孫子は吹き出しながら笑い始めると、俺の頭を二、三度叩いた。なんだかチビと言われたような感じがする。



「吉永はいい子だな、いいこいいこ」



………いや、完全に悪意があるな、こいつ。
まるで俺がチビか子供であるかのような言動に、細やかな殺意さえ生まれた。
確かに、安孫子は背が高い。180cmは絶対ある。
比べて俺は、ギリギリ170cm、縮んだら一貫の終わり状態だ。
安孫子から見れば俺なんて充分チビなんだろう。悔しい…!



「ん?なんだよその不機嫌そうな顔…」

「べっつに……俺帰る」



踵を返し、俺は安孫子から離れる。安孫子は慌てたような声を上げた。



「待てよ吉永ー、暇なら茶くらい飲みに行こうぜ、なーあ」



腕に絡みつく安孫子は甘い声をあげる。その声に反応した女性の目はギラついていた。



「……用事あるの思い出したから帰る」



安孫子の腕を振り払い、俺は走って逃げた。








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