俺を挟んで火花を散らす二人から救ってくれたのは、意外や意外、友人上林の「吉永お前先生に呼ばれてたぞ」の一言だった。

二人から無事解放された俺は、上林と廊下で歩いていた。
先生の呼び出しは、俺の状況を見かねてついた嘘らしい。上林の勇気に乾杯。



「上林、お前間野の事苦手じゃなかったっけ」

「苦手だよ。吉永も苦手じゃなかった?」

「……俺は……」



なんとも答えづらい。
苦手は苦手だが、なんというか、慣れというか。つまり、かなり苦手意識は薄まっていた。



「……普通かな」

「?……へー」



呟く上林を見やる。
この一件で上林に対する株がいっきに急上昇だ。昨日はお前を裏切って自分の唇を守ってごめんな!心の中で合掌。

因みに、俺と上林は小中高と同じ学校に通うスーパー腐れ縁だ。特別仲良しなわけではないが、別に嫌いでもないので十年あまりずっと一緒にいるという、グダグダした関係。
そんな関係なのに、未だに名字で呼びあうのは俺たちの性格故だろう。

と、ここまで思考を巡らせた時に気づいた。
そうか、俺もうコイツと(間野と半ば強制的に食べるため)昼食えないし、一緒に下校(間野と半ば強制的に帰るため)出来ないんだよな。考えたら途端切なくなってきた。この俺に負けないくらい平凡な面に会う機会が減るのか…。



「……俺、これからはお前と昼食ったり帰ったりは出来ないけど、ずっと友達だからな」

「え…何いきなり…気持ち悪っ…」



ドン引きされた。








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テーマ「人外ファンタジー」
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