「あれ間野じゃん、久しぶりー。てか何こえー顔してんだよ」
ヘラヘラしながら、安孫子は俺の片方の手を握った。何故だ。
「てか吉永と知り合い?」
「…ん。ダチだよ。マブダチ」
マブダチになった覚えがない俺は思わず間野を見やる。安孫子が手を握る力を強くした。
「へー…そうなの?吉永」
「………まあ」
安孫子に鋭い眼光で問われ、俺は肯定を示す。否定したら、間野が怖そうだし。
安孫子を見つめていたので、間野がほくそ笑んだことも知らずに、俺の体は間野に引き寄せられた。
チャラ男はスキンシップが過剰なのだろうか。心臓に悪い。
苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる安孫子を一瞥、すぐ真上にある間野の様子を伺った。
先ほどのような機嫌の悪さはまるでなかった。
「俺だって、吉永とは他人じゃない関係だ。なぁ?」
俺に聞くな。
安孫子に呆れた視線を寄越せば、素敵な笑顔を返してくれた。そんなものは要らん。
と、いうか。俺の背中に回された間野の腕、俺の手を握る安孫子の手。どちらにせよさっさと離れてほしい。まあ、俺のチキンハートがこんな状況でそんな事を言える筈もなく、一触即発状態な二人を眺めることしかできなかった。
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