一週間たち、また俺が図書委員の当番になった。因みに、本の貸し出し期間は一週間なので、藤井は今日までに返さなくてはならない。
返却名簿を見たところ、藤井はまだ本を返していないので、今日返しに来るのだろうと俺はふんでいた。

図書室をあけて一時間。あと30分たてば図書室を閉める時間になる。しかし、藤井が来る様子はない。
今日返却に来なければ明日俺が回収に向かわなきゃいけないと言うのに。
俺ははぁ、とため息をつく。
今日は誰一人として利用者のいない静かな図書室には俺のため息はよく響いた。

次の日、結局来なかった藤井の元へ俺は足を運んでいた。もちろん、本の回収のためだ。
藤井のクラスであるA組を覗く。窓際の方で藤井が女子に囲まれていた。
うわぁ、話しかけづらい。と、俺は早速自分のクラスに帰りたくなる。
暫くぐずぐずしていると、不意に藤井と目があった。藤井は女子から離れて、俺の方にやって来た。



「本の回収だよね?」

「まぁそうです」

「ゴメンね、今日は持ってきてないんだ」



藤井は眉をハの字に垂れて申し訳なさそうに手を合わせた。
それなら仕方がないか、と俺は藤井に言おうと口を開く。すると、その前に藤井が何か言い出した。「今日の放課後時間あるかな?」俺はきょとんとする。一応頷けば、藤井は笑顔でこんな提案をしてきた。



「じゃあさ、俺、放課後に家から本とってくるから待っててくれない?」

「え…」

「それなら君もまた俺の元に来なくてすむんじゃない?」



それはそうだが、と俺は言葉につまる。「じゃあ決まり!A組の前で待っててくれればいいから」藤井は俺の返事を聞かずに女子の方に行ってしまった。
俺の頭には、友人の言っていたあの噂がずっと響いていた。



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つづく








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