攻めが結構ひどい
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甘くてまろやかなその固形物を舌で転がせば、どんどんそれは俺の中に溶け込んでいく。俺は甘党だから、この感覚がたまらない。
とても幸せな気分でふわふわとしていたが、それはすぐに終わってしまった。



「ようデブ沢てめぇ今度はなに食ってんだよ」



同じクラスの、駒井だ。いつも何かにつけて俺に突っかかってくる嫌なやつ。
俺の黒沢という名字をデブ沢と呼んで楽しんでいるのはこいつくらいだ。
俺は駒井をちらりと見やって、そのまま視線を飴の包み紙に戻した。
俺は別にデブじゃない。ただちょっと人より体格が良いだけ。それだけなのに、駒井に罵られる度に痩せるべきなんじゃないか、と悩んでしまう。



「聞いてんのかよデブ沢!」



駒井が苛立ったような声を上げて俺の頭を掴んで無理矢理自分の方に向かせた。俺は眉を寄せながら駒井を見上げる。駒井は俺を見て鼻で笑った。「ちょー醜い。俺がこんなんだったら耐えられないわー」ケタケタと悪意しかない笑い声が俺の頭のなかで響いた。
目頭が熱くて堪らない。
駒井の綺麗な顔がぼやけて見える。驚いているのか、心なしか目が見開かれいる。
俺はゆっくり口を開いた。



「そんなに、俺が嫌いなら、関わらなきゃいいだろ、!俺は、お前が大嫌いだ!!」



涙と共に俺の感情まであふれでる。
駒井の顔は完全に見えなくて、俺はただただ泣いていた。
ぐずぐずと泣いていれば、俺の体は何かに包まれた。吃驚して、涙が止まった気がする。



「な、に?」

「…そんなつもりじゃない。おれ、ガキだから、お前傷つけるの止められなくて、」



肩が濡れていくような感覚がした。あ、駒井が泣いてるんだな、と俺は冷静に思った。
俺は既に泣き止んでいて、駒井が鼻をすする音が大きく聞こえた。
「謝るから、嫌いな、て、言うなよ」
駒井の弱った姿を見て、俺は何だか心が満たされていく気がした。
俺はそっと駒井の背中に手を回す。駒井の体が震えた。



「…泣かないでよ。も、嫌いなんて言わないから」



駒井の手に力が加わった。俺は、それにどうしようもないくらい愛しく感じた。


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流される平凡可愛いよね








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テーマ「人外ファンタジー」
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