神様って、意地悪だと思わないか?
天は二物を与えず、って言うけどさ、俺は長所が考えないと出てこないような平凡野郎なのに、同じクラスの澤みたく長所の塊みたいなやつもいる。
世の中不公平ばかりだ。

完璧男澤は、少しスキンシップが過剰だ。
澤がイケメンだから違和感無いためみんな気にしないが、俺は気になってしょうがない。
もともと人に触られたりするのは好きじゃないのが主な理由だろう。



「稲賀〜!」



肩に澤がもたれ掛かってくる。俺は反射的に身体を翻してしまった。
ヤバい、と思い澤を見やる。澤はポカンとしていた。恐らく拒まれたことなど無かったのだろう。良い機会だ、と俺は澤に言った。「俺に触らないでくれないか?」あ、ちょっと言葉が足りなかった。俺は慌てて付け加えようと口を開くが、それは顔を真っ赤にした澤に拒まれた。



「稲賀…!やっぱり俺の思った通り…!」

「え、って、ちょ!なにしてんだよ!」



恍惚とした表情の澤がいきなり床にひれ伏し始め、俺は心底焦った。いつもの澤じゃないことはなんとなくわかるが、何故俺に土下座みたいなことしてんだよ。
立ってもらおうと必死に呼び掛ける。すると澤は一言言い放った。



「踏んで」



「…はぁ?」俺の気持ちはまさにこんな感じ。実際声にも出た。
澤が顔を上げた。赤く染まった頬がなんかエロい。
澤はいつもの笑顔(色気増し)で再び言った。



「だから、稲賀に踏んでほしいんだ」

「いや、ちょ。何でだよ…」



俺はドン引きしながら一応理由を聞いてみた。すると澤は、満面の笑みを浮かべた。



「稲賀は俺の理想だ。俺のこと蔑んだりするのはお前が初めてだよ」



…いや、理由になってないし。そもそも俺、澤のこと蔑んだか?もしかして、さっきの「俺に触るな」ってやつを蔑んだって勘違いしてんのか?
俺は慌てて付け加えた。



「俺はそういうつもりで言ったんじゃ…触られんのが苦手って意味でだな、」

「ううん、関係ない。とにかく踏んで?」



えぇ、何で人の話聞かないの。
再び澤が頭を下げる。早く踏んで、と背中が語っていた。
踏まなければ、このまま終らない気がする。しかし、自分より遥かに上に居るような人物を踏むのは気が引ける。そもそも人を踏んだりなんて俺には出来ない。
俺は徐々に後退り、澤を置いて逃げ出した。


次の日、俺は重たい気分で登校した。
なるべく澤に会わないようにこそこそしたが、結局澤にすぐ捕まった。
無表情の澤はなんか怖くて、俺は思わず目をそらす。



「えっと、昨日は置いて帰ってごめん…」

「ううん、いいんだ」



澤はいつもの笑顔で頭を振った。怒ってないことに俺は安心する。それじゃ、と俺澤から離れようと動く。しかし腕をまた掴まれた。なんなんだよ、と、俺は澤を見やる。満面の笑みが腹立つ。




「だって、昨日のは放置プレイでしょ?」

「はぁ?!」



昨日に続いてなんなんだ、澤は。こんな奴じゃなかった気がするんだが。
「やっぱり稲賀は俺のご主人様になるべきだよ」
俺の手にスリスリと頬擦りされて、俺は背中が泡立つのを感じた。思わずそのきれいな顔をはね除ける。「やめろよ気持ち悪い」思った以上に低い声が出た。
澤の様子を伺えば、昨日みたいな恍惚とした表情を浮かべていた。




「はぁ、もっと言って?もっと殴って?ねぇ、」

「〜〜!!離れろ!!」



俺は澤を突き飛ばした。
澤は真っ赤な顔で、期待の眼差しで俺を見上げる。俺は昨日みたく逃げ出した。



------------------

そして付きまとわれる日々。
ネタ提供ありがとうございます!だいぶ違う感じですみません








「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -