「いい?知らない人について行ったりしちゃダメよ。わかった?」
「うん、わかった!」
少年は母に頭を撫でられながら言われた言葉に元気よく頷いた。
少年はその地味な顔に笑顔を浮かべ、商店街の真ん中を歩いていた。
少年は今日始めて一人でお使いに出掛けている。母に頼まれたものが書かれた紙をいれた鞄を片手に、 いつも母と来ていたスーパーに向かっていた。
「あらぁ、あなた小池さんところの子じゃない。一人でおつかい?偉いわねぇ」
いつも母が立ち話をしているおばさんだ、と少年は気づいた。知らない人じゃないから、と少年は元気よく返事をした。「うん!ママに頼まれたんだ!」おばさんはもう一度笑う。
「そうなの、気をつけなさいね」
おばさんと別れた少年はスーパーへと急いだ。
数分歩き、やっとスーパーが見えてきた。少年は既に疲れ始めていた。
スーパーの自動ドアを潜ろうとしたとき、誰かが少年の名を呼んだ。振り向けば、母がいい男と誉めていた近所の青年が立っていた。どこかキラキラした笑顔を浮かべ、少年に近づく。
「どうしたの?一人?」
「うん、ママに頼まれたの!」
知らない人じゃないため、少年は普通に答えた。青年はえらいね、と少年の頭を撫でる。「お兄さんがおつかい手伝おうか?」青年の提案に少年は思わず悩んだ。
疲れ始めている少年には、この空っぽな鞄を持つことさえ苦痛だったのだ。出来ることなら目の前にいる体格のいい彼に手伝ってほしい。
少年は青年を見上げた。
「ま、ママに言ったりしない?」
「言わないよ。ただ少しお礼をもらうだけ」
青年の妖しい笑みにも気づかず、少年は満面の笑みを浮かべた。
「お礼ってなにすればいいの?」
買い物も済み、少年は青年に言われたことを思い出した。青年は少年の荷物を持ちながら、少年の頭を撫でた。「じゃあ僕のお家においで」青年が笑いながら言う。
少年は荷物をちらりと見る。青年は大丈夫、と笑った。
「少しだけだから、ね?お菓子もだすよ」
「…じゃあ、行く」
少年は少し考えた後、頷きながら了解した。
それが間違いだったと気づくのはすぐのことだった。
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少年逃げてー!
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