NL表現多め
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ワンルームのオンボロアパートでの一人暮らし。
大学を行きながら、バイトをする毎日。つまらない毎日だと自分でも思う。
こんな毎日の中思い出すのは、女々しくも高校時代好きだった彼女の事だ。
特に目立つ子でも無かったが、とってもいい子だった。俺みたいな地味男にでも、かなり優しく接してくれたのだ。それがきっかけで簡単に恋に落ちてしまい、それからは彼女を気にする毎日だった。
そこそこ話せるようになったのは、卒業式目前で、俺はこの気持ちを胸に仕舞うことを決意した。のに。
大学生になった今でも、未練がましく彼女の事ばかりが頭を右往左往する。
俺は彼女の事を吹っ切るためにバイトに打ち込んだ。
「あれ、宮平くん?」
バーでバイトを始めて半年、平凡な顔のお陰で名前など客に覚えてもらった事など無いのに。とか思いつつ振り向く。
するとそこには、俺の心を捉えて離さない彼女の姿が。
「と、渡名喜さん…!」
「やっぱり宮平くんだ!久しぶりだね!」
彼女は昔と変わらない可愛らしい、否、昔よりも可愛らしい笑顔を浮かべた。
これを運命と呼ばず、何を運命だというんだ!
昔よりも綺麗になった彼女との再開。これをきっかけに付き合えたりするかもしれない。
淡い期待で、俺の心は最高潮に盛り上がっていた。「おい、先に行くなよ」のだが、突然聞こえたイケメンボイスに俺の期待は地に叩きつけられた。
「だって健さん遅いんだもん」
彼女は笑顔でイケメンに言う。イケメンは苦笑しながら彼女の隣に座った。
え、何?彼氏?彼氏なの?そりゃないよ神様!
俺が神様を呪いそうになっていると、俺に気づいたイケメンが彼女に問いかけた。
「彼は?」
「高校時代の友達の宮平くん」
「…み、宮平尚吾です…」
俺は不本意ながら自己紹介をした。イケメンは「へぇ…」と俺を品定めするように見つめたあと、手を差し出してきた。
「俺は栂野健といいます。よろしくね、尚吾くん」
俺はあんたによろしくする事ねぇから!と思いつつ、チキンな俺に差し出された手を無視することなんて出来なくて、その手を握ってやる。
イケメンはブンブン手を上下に振って満足そうに笑った。
「彼、仕事場の上司なの」
「え、」
思わず彼女の顔を見やる。彼女は笑顔を浮かべていて、上司というのは嘘じゃ無さそうだった。
彼女からイケメンに視線を移す。イケメンは人に好かれそうな笑みを浮かべていた。俺はつられて愛想笑い。
「ど、どんなお仕事してるの?」
「アパレル関係だよ」
彼女に聞いたはずが、イケメンが元気よく答えた。
違和感を感じつつ、俺は彼女を見やる。
「へぇ、お洒落な仕事だね」
「そんなことないよ。色々大変なんだ」
またも、イケメンが返事をした。
まるで、彼女と俺が喋れないようにしているみたいだ。
……まさか、このイケメン。彼女のことを狙っているんじゃ…!?
俺はイケメンをちらりと見やる。イケメンは爽やかな笑みを返してきた。なんか腹立つ。
「そうだ、尚吾くん。連絡先教えてくれるかな?話したいこともあるし…」
話したい事?それは、彼女に近づくな、とか?
「…いいですよ」男を見せるんだ、俺!俺は適当な紙に連絡先を書くと、イケメンに押し付けた。少しだけ睨んでみる。イケメンは更に綺麗な笑顔で、「後で連絡するね」と言った。
俺は頷く。文句でもなんでもかかってこいや!
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後日告白メールが届きました。
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