学校の裏には何故か森がある。
その森にはあまり人が来なくて、見たことあるのは彼だけだ。



「熊さん、抱きついてもいい?」



僕が"熊さん"と呼んだ彼は、森に行くと必ずいる人だ。
名前も学年も知らないけど、僕と熊さんはそこそこ仲良し。だと思う。



「…ん」



僕の言葉に、熊さんは静かに腕を広げた。
僕は嬉しくて、熊さんの腕の中に飛び込む。彼の体からは良い香りがした。僕には無い、厚い胸板がとっても心地よかった。



「熊さんは大きいね」

「…お前は小さいな」



男らしい顔で笑って、熊さんは僕の頭をくしゃくしゃと撫でた。手だってすごくでかい。
僕は熊さんの胸に顔を押し付けて、うつらうつら目を閉じた。












「…ん、」



もぞもぞ動きながら目を開く。
熊さんの腕の中にいたはずが、何故かベッドの上にいた。
ここは何処だろう、と辺りを見渡すが、ベッドと扉以外に目立った物はない。
僕はベッドの上に座ったまま動けないでいた。

手首とベッドヘッドに繋がる鎖。

それのせいで、僕の行動範囲はベッド周辺だけになってしまっていた。
鎖を外そうとしても、暴れてみても、びくともしない。
僕はだんだん気持ち悪くなってきて、踞った。嫌なリズムで刻まれていく鼓動を落ち着かすために僕は深呼吸を繰り返す。

バタン、開閉音が聞こえた。

僕は慌てて顔をあげた。



「く、まさん…?」



扉の前には、熊さんが立っていた。
カッコイイ顔を真面目な感じにさせて、僕に近づいてくる。僕は助けを求めるように熊さんにすがった。



「熊さん…!僕鎖に…!」

「大丈夫だ、落ち着け」



大丈夫とは、助けてくれるという事だろうか。僕は安堵の息をもらした。
熊さんは優しい。僕の敵なんかじゃない。
熊さんは鎖が繋がった僕の手首を撫でた。



「暴れたらダメだろ。嗚呼…赤くなっている」



優しく撫でられているのに、僕の胸は騒がしくざわいたままだった。だって、熊さんの目が怖い。



「熊さ、これ」

「大丈夫、これからはずっと一緒だからな、安心していいぞ」



そうじゃない。そうじゃないのに、僕は一言も言葉が出せないでいた。
熊さんが僕を抱き締める。あんなに心地よかった胸板が、今ではただの恐怖だった。



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最初考えてたのと大分違う








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