今日も1日つまらない授業を聞いて、学校は終了してしまう。同じような毎日の繰り返しに、俺は退屈していた。
していたけれど、こんなアブノーマルは正直望んでいなかった。



「今日もあるよ…」



独り暮らしのアパートのポストには、手紙が数枚と、男臭いそれが塗られ、かぴかぴに乾いた紙が二枚。
完全に嫌がらせだ。
俺はいつもみたく、手紙をあけること無くイカ臭い紙ともにゴミ箱に捨てた。
中を見たって、俺に都合の良いことは一切無いのだから。

最近始まったこの悪質なイタズラ。無色同然の毎日に、汚く色づいたアブノーマルだ。
そもそも、こういうイタズラは女の子とかがされるものなんじゃないだろうか?俺みたいな量産型の男子学生にやることじゃあない気がする。
まぁ、そんな事を気にしたって仕方がない。もしかしたら、頻繁に来る姉の事をここの住人だと勘違いして、この心底気色の悪いイタズラをしているのかも。
そう思うのが、俺的にはごく自然だ。
ここの住人が俺だと解れば、この変態も諦めるだろ。俺はそう軽く考えながら床についた。



「おはよう」



目覚めた原因はこの声だ。俺は姉貴かな、と思いながら寝返りをうって携帯を覗く。まだ5時前だ。
こんな時間になんなんだよ、と俺は布団を頭まで被った。
姉貴は俺の身体を揺らす。俺はうーうー言いながらそれを拒んだ。まだ眠たいし、寝れるのなら寝たい。



「やめろよ姉貴…家帰れ」

「姉貴?何か勘違いしてるよ?」



俺は姉貴の、否姉貴だと思っていたやつの顔を勢いよく見やった。
案の定姉貴なんかそこにはいなくて、やたらと男前な男が俺が寝ているベッドの横で腰を下ろしていた。俺は身体が冷たくなるのを感じながら布団を被ったまま目一杯後ずさった。



「だ、れだよ、お前」

「やだなぁ、いつも手紙あげてるのに」



俺は目を見開いた。じゃあ、あの趣味の悪いイタズラはこのイケメンがしていたと言うのか?全く信じられない。
イケメンはふわりと微笑んだ。「僕の愛は届いた?」全身の毛穴がきゅう、としまった。
そこで、俺はある可能性を思い出した。
姉貴をここの住人だと思っている、だ。
それなら、部屋に忍び込んだ理由も頷ける。姉貴は化粧をしていれば相当の美人だし、このイケメンが好きになっても可笑しくは無いと思う。それに、俺は先程から布団を被っているため、イケメンは俺が姉貴だと思っているのだろう。
俺は混乱した頭でそう勝手に結論付けた。
俺は被っていた布団をどける。イケメンが目を見開いた。



「俺は、姉貴じゃな」「やっと顔を見せてくれたね」

「は…」



俺の言葉を遮ったかと思えば、イケメンは俺の身体に抱きついた。俺はぽかん、としてしまい全く抵抗なんて出来なかった。




「君は恥ずかしがりやさんだなぁ。布団なんて被っちゃって、誘ってるのかと思って襲うところだったよ?僕以外にそんな姿見せたら許さないんだからね?それに、僕と姉だからってやたらとこの家に来るあの女とを間違えるなんて許せないなぁ。お仕置きが必要なのかな?それとも僕の愛が足りないから怒ってるの?嫉妬させてるの?だとしたら大成功だよ。僕は今にもあの女を殺してしまいたいほど嫉妬に飲まれているもの。ねぇ、もう怒らないで?僕も怒らないから。僕も君を許すから、君も僕を許してよ?ねぇ、」



この男は何を言っているんだろう。
その異常な言葉を、俺はどこか他人事で聞いていた。



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自分のストーカーと信じたくなかった受け








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